とんだ誤算でした…〈退職金3,000万円・年金月28万円〉の67歳・元大手企業常務、“安泰の老後”が突如終焉。家を失い、ボロボロの築古アパートで暮らし始めたワケ【FPの助言】
単身の高齢者にとって、賃貸住宅への入居が難しいワケ
Aさんが希望する、交通の便や買い物に便利な立地の物件を購入するには、中古のワンルームマンションでも、3,000万円は必要です。住宅ローンを組むのは、年齢からも収入からも無理ですので、断念しました。 次に、ネットで賃貸のマンションを探しました。気に入った物件が見つかっても、不動産仲介業者に問い合わせると断られます。どうやら年齢と単身の入居が問題になるようです。そうとわかれば、生涯住める終の棲家を探さないといけません。 内閣府「令和5年高齢社会対策総合調査」で、65歳以上で賃貸住宅の入居を断られた理由として、「高齢のため」が61.5%と最も高く、次いで、Aさんには当てはまらない「万が一の時の身元引受人がないため」28.2%、「家賃の連帯保証人がいないため」20.5%と続いています。 結局入居できる物件は、築古の木造アパートでした。室内はカビ臭く、土壁が剥がれかかった、約4年間空室だった部屋です。それでも家賃に共益費を含めると、月約6万円の出費です。 Aさんは、いくら名が通った企業の元常務でも、単なる高齢の無職として扱われることにショックを受けました。 「こんな老後になるとは……とんだ誤算だったな」 すっかり気落ちしたAさんは、近くのスーパーにカップ麺を買いに行く以外、出かけることはなくなりました。 芝居でひと安心のAさん そんなある日の夕方、突然部屋のカギを開ける音がしました。 そして、Bさんがいつもように「ただいまー」と実家から帰ってきたのです。その後にCさん夫婦と孫も入ってきました。それを見て、Aさんは顔を伏せました。どうやら涙を流しているようです。 Cさんは「薬が効きすぎたかな」といい、Bさんはほっとしたように、笑顔でAさんを見ています。 この騒動は、「いくら言っても勤めていたときと同様、家計に関心を持ってくれないし、行きたくもない老人ホームに入居すると言っている。なによりこのままでは、家計が破産する」と心配したBさんが、Cさんに相談してひと芝居打ったのでした。 もし離婚すれば、Aさんは今までの生活は望めません。またBさんも、3号分割で年金受給が増えると、月約14万5,000円の受給額になります。しかしこのままマンションに住めば、マンションの管理費や固定資産税などの負担は今までと変わりません。 離婚することで離婚の原因は解決できても、離婚後の生活はどうするのか。特に熟年離婚をするときは、人生の終末まで熟慮して実行することが大切です。 牧野 寿和 牧野FP事務所合同会社 代表社員