エルメス麻布台ヒルズ店を手がけた建築家のドゥニ・モンテルがその空間とデザインを語る。
店舗内に使われたファブリックは京都西陣織の特注品だ。また、ウィメンズのプレタポルテ売り場のガラスの内側にシェードのように下がるのは、日本の組紐なのだとか。 「様々な色の組紐を、ひねりを加えながら結び合わせて吊るしています。これも秋に色づく紅葉からヒントを得た装飾で、眺める角度によって色合いが変わって見えるのです。お店の前を通りがかった方にも外から見て楽しんでいただけると思います」(ドゥニ・モンテル) 2階フロアは特別なお客さまを迎えるスペース。パリのフォーブル・サントノーレ店の屋上庭園を思わせる小さな屋外テラスが付いている。テラスにはフランス人アーティスト、シルヴィ・オーヴレによるセラミック彫刻が置かれ、パブリックアートが屋外に点在する麻布台ヒルズのコンセプトとも呼応する。 「2階フロアの壁の一面は可動式の木製バーでできていて、商品の大きさに合わせてバーを倒して自由に棚を構成することができます」(ドゥニ・モンテル)
正面入口を入ってすぐの床にエクスリブリス(蔵書票)のモザイクが迎えるなど、メゾンを象徴する共通のデザインを踏襲しながらも、麻布台ヒルズという土地柄を考慮し、日本ならではの素材と工芸の匠技を随所に取り入れている。 「麻布台ヒルズというハイパーモダンな街に広がるワクワクした高揚感に浸りながら、このエルメスの新しい店に一歩入れば、ゆるやかでリラックスした雰囲気を味わっていただけると思います」(ドゥニ・モンテル)
photo_ text_Mari Matsubara