SL列車で「最も偉大な米大統領」のおくりびとを体験!?
乗り込むと、足元に草花の模様のカーペットが敷かれて重厚な雰囲気が漂う。木目の壁に沿った通路を進むと、先には黒いカバーをかけた木棺が置かれており、花が手向けられていた。リンカーンの柩に見立てているのは一目瞭然だった。 リンカーンの柩を運んだ車両は、大統領専用車両として1865年3月に完成した。しかし、係員によると「南北戦争が続いている中でリンカーンはぜいたくな車両に乗るのをためらい、一度も足を踏み入れなかった」そうだ。 暗殺を受けて柩を運ぶのに使うことが急きょ決まり、リンカーンの他に11歳で病死した三男、ウィリアムの遺体も運ばれた。連結した特別列車はフィラデルフィアやニューヨーク、シカゴなどを経由して「引きも切らない国民が最後の別れを告げた」そうで、奴隷解放宣言を出したリンカーンだけに「死を悼む黒人の姿も目立った」という。 模造車両はイリノイ州のボランティアら約30人が約3年半がかりで組み立て、35万ドル(約5千万円)程度もの費用を賄うために多くの人が寄付をした。
「最も偉大な米大統領」が暗殺で非業の死を遂げたことに大勢の国民が心を痛め、畏敬の念を持って葬送した史実。それを後世に伝えようと車両を再現し、大切に保存をしてきた人たちの精神はまぎれもなく「本物」だった。(提供写真以外は筆者撮影) ☆大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)共同通信ワシントン支局次長。エーブラハム・リンカーンが首位だったユーゴブの調査で、ドナルド・トランプ前大統領の支持率は40%と同氏までの歴代44人中33位と、想定外の高さに驚きを禁じ得ませんでした。