SL列車で「最も偉大な米大統領」のおくりびとを体験!?
どんな展開が待ち受けているのかを手に汗を握りながら見守っていると、スタンダールの小説の題名をほうふつとさせる赤と黒で彩られた蒸気機関車(SL)が正面の大きな煙突から白い煙を吐き出しながら近づいてきた。東京ディズニーランド(千葉県浦安市)の園内を走る「ウエスタンリバー鉄道」のSLとよく似たデザインで、ぴかぴかだ。 乗務を終えた機関士に「よく手入れしているね」と話しかけると、「これは1868年に造られたカリフォルニア州のセントラル・パシフィック鉄道向けのSLを実物大のサイズで再現したものだよ」と明かした。ただ、「本物は火室で木を燃やすことで水を沸騰させて蒸気を作っていたけれども、この機関車は木の代わりに原油を燃やしているんだ」とも付け加えた。 「どれもこれも模造品か」という心の声が伝わってしまったのかどうか、「この路線はリンカーンの特別列車が実際に通ったんだよ」という補足説明も受けた。
SLにも増して興味津々だったのは、リンカーンの柩を載せた模造車両だ。ところが、SLに連結されていたのはアニメ「きかんしゃトーマス」の「アニー」と「クララベル」のような外観の客車だけだ。 狐につままれたような気分で車内のクロスシート座席に腰かけると、車掌の「出発進行!」というかけ声とともに列車が動き出した。SLの汽笛が響く沿線には木々が生い茂り、映画化された小説「マディソン郡の橋」に登場するような屋根付き橋もある牧歌的な風景だ。 出発駅の約2キロ先にある倉庫で停車すると、車掌から降りるように促された。下車すると隣の線路にチョコレート色の客車が停車しており、これこそリンカーンの柩を運んだ模造車両だった。 SL列車で模造列車を保存している倉庫へ赴き、車内に入るというのが見学ルートだった。実物大の車両は長さが約15メートルあり、台車が通常の2倍の四つあり、計16もの車輪を備えているのが特徴的だ。