SL列車で「最も偉大な米大統領」のおくりびとを体験!?
【汐留鉄道倶楽部】2024年11月の米大統領選挙で再選を目指す現職のジョー・バイデン大統領(民主党)は、ロイター通信とイプソスの7月の世論調査で支持率が40%と低迷している。野党共和党の候補者争いでは前大統領のドナルド・トランプ氏は大きくリードしているが、バイデン氏に敗れた20年の大統領選の結果を覆そうとして国に欺いた罪などで3回にわたって起訴されて「米大統領に名を連ねていること自体が米国史の汚点だ」(米国人)と後ろ指を差される始末だ。 これに対し、ユーゴブの23年4~6月期の調査で最多の78%が支持するなど「最も偉大な米大統領」として広く認知されているのが大統領在任中に奴隷解放宣言に署名し、「人民の、人民による、人民のための政治」という名言を残した第16代米大統領のエーブラハム・リンカーン(1809~65年)だ。1865年4月に首都ワシントンのフォード劇場で観劇中に銃撃されて命を落とした後、埋葬先となった中西部イリノイ州スプリングフィールドまでの約2700キロを蒸気機関車(SL)が引く特別列車で遺体を運んだ。
リンカーンの柩を載せた客車は1911年に焼失してしまったが、昔の写真を参考にして再現した模造車両が死去150年後の2015年に完成した。その模造車両を見学できるという東部ペンシルベニア州の観光施設「ストーン・ゲイブルズ・エステート」を訪れた。 切符を買って係員に「リンカーンの霊柩車両のレプリカを見るのにどこへ行けばいい?」と尋ねると、「あそこからSLに乗るんだよ」と先にあるプラットホームを指さした。 それを聞き、SLがけん引する模造車両に来場者が乗り込み、リンカーンの柩に寄り添う「おくりびと」体験が待ち受けているのかと想像した。もしも「最も偉大な米大統領」の葬送を観光客向けのショーに利用しているとすれば、不謹慎ではなかろうか。 たとえ乗り込むのは模造車両とはいえ、リンカーンの遺体を載せているわけではないとはいえ、ワシントンではフォード劇場に面した建物が「リンカーンが死去した家」と看板を掲げて観光施設化しているお国柄とはいえ…。