賠償額220万円…「Colabo名誉毀損裁判」判決が暗示するネット空間の“深刻な問題”
被告男性の高裁での「逆転勝訴」への課題は?
他方、被告男性およびその弁護士らは、敗訴判決を受けての記者会見等を行っていない。しかし、被告男性は敗訴判決を受けてX(旧Twitter)に以下の投稿を行っている。 「どうせ高裁にいくとはいえ、地裁でも勝っておきたかったんですが今回の判決は残念です。控訴でぜひ逆転できればと思います」(X 2024年7月18日15:16投稿より) 総額1億6000万円ともいわれるカンパをした支持者に配慮してか、控訴審での「逆転」に強い意欲を示しているかのように見える。 この投稿の通り、被告男性が控訴審で「逆転」しようとする場合、立ちはだかる課題はどのようなものだろうか。 注目すべきは、本件判決の決定的な理由が、法律の解釈などの法律論に至るまでもなく、それ以前の段階で、被告側の主張した事実がことごとく裁判所により否定されたことである。 被告男性には3名の代理人弁護士がついており、考えられるありとあらゆる事実・証拠を吟味して提出したことは間違いない。にもかかわらず、主張した事実と証拠が、事実認定のプロである裁判所によってことごとく退けられているという厳然たる事実がある。控訴審で一審の事実認定が覆されるためには、被告側は新たに強力な証拠を提出する必要がある。 また、仮に控訴審で被告男性が新しい有力な証拠を提出することができたとしても、「時機に後れた攻撃防御方法」として却下される可能性が考えられる。これは、故意または重大な過失により時機に後れて主張・立証を行った場合、これにより訴訟の完結を遅延させることになれば、裁判所は却下することができるというルールである(民事訴訟法157条1項)。 特に、判決で裁判所は以下のように断じている。 「被告が真実相当性を立証するための重要な機会となる本人尋問に合理的な理由なく出頭しなかった」(判決文P.27) もし、男性が新たな有力な証拠を提出しえたとしても、控訴審では上記の「合理的な理由」の立証を求められることになるだろう。
弁護士JP編集部