賠償額220万円…「Colabo名誉毀損裁判」判決が暗示するネット空間の“深刻な問題”
改めて浮かび上がる「名誉毀損の慰謝料」の問題と、新たな問題
実際の判決文はどうなっているか。裁判所は、原告の社会的評価の低下と被った損害について、被告が本件訴訟を通じて利益を得ようとしている事実にも触れながら認定している。以下、やや長くなるが引用する(判決文P29~30)。 「被告は、本件各投稿において、何ら合理的な根拠もなく、原告Colaboの活動を『生活保護ビジネス』と批判ないし揶揄し、自らの利益のために、支援対象者が受給した生活保護費を不正に吸い上げている旨の情報をインターネット上に掲載しており、かえって、原告Colaboが公開した情報を断片的に盛り込むことで、閲覧者をしてその内容が真実であると信じさせかねない構成となっているものであって、これにより原告Colaboの社会的評価の低下の程度には相当なものがあると認められる。また、その代表者として原告Colaboの事業運営に主導的な役割を果たしてきた原告仁藤も名指して批判されているもので、同様に、相当な社会的評価の低下があったものと認められる。」 「本件各投稿の閲覧者等により、原告らの活動が妨害されるなどし、実際にその事業運営に支障が生じていること、被告が、本件訴訟の提起意向も、原告らに関する情報発信を頻繁に行ったり、本件訴状を有料で公開したりするなど、自らの利益のために本件訴訟を利用し、しかもそれを公言していることなどの事情が認められることに照らすと、原告Colaboについては、本件各投稿に対する対応等により生じた費用に係る支出や事業収入の低下等の経済的な損失を含む多大な損害が生じたと推認され、かつ、原告仁藤については、本件各投稿により多大な精神的苦痛を被ったものと推認される」 この判決文の記述からもわかる通り、裁判所は、原告が受けた損害を「多大な損害」「多大な精神的苦痛」と評価している。 本件に限らず、名誉毀損の慰謝料額については、従来から裁判所の認定額が低いとの指摘が行われてきた。インターネット空間の拡大により、名誉毀損的表現が急速に拡散し、いったん拡散するといわゆる「対抗言論」で損害を回復するには限界があるという状況ができ上がりつつある。 また、これまで、被告側が訴訟を通じて利益を得ようとすることは想定されていなかった。従来の問題に加え、新しい問題も発生してきている。 本件にとどまらず、すべての個人・団体が、名誉が毀損され、かつ回復が著しく困難になる危険性にさらされている状況が既に現実のものとなっている。裁判所は、この事態に対応できているのだろうか。 仁藤氏:「この程度の賠償がなされても、被告にはまったく痛手はないのかなと感じている。むしろこのようにデマを拡散して生み続けることがお金儲けになってしまう。そのこと自体が深刻な問題だと考えている。 被告のやり方を見て真似をする加害者が多数出てきている。『不正の追及』というポーズをとりながらColaboに関するデマを拡散していくことによって、数万円、数百万円、一千万円以上の収益やカンパを得ている加害者が複数いる」 なお、それらの加害者の一部は、非を認めて自ら和解を申し出てきたという。 神原弁護士:「高裁でさらに被害立証をぶ厚く行い、もともとの1100万円の請求の全額が認められるように、戦っていきたい」