ウィノナ・ライダー53歳の誕生日 名作「シザーハンズ」から34年 “再ブレーク”した実力派女優のキャリアを振り返る
9月27日より劇場公開中の映画「ビートルジュース ビートルジュース」に出演しているウィノナ・ライダーが、10月29日に53歳の誕生日を迎えた。彼女の出世作となった「ビートルジュース」(1988年)から36年、続編となる本作でも“同じ役”リディアを演じ、鬼才ティム・バートン監督の描く世界の中で存在感を示している。今回は同じくバートン監督の名作「シザーハンズ」など、ウィノナのこれまでのキャリアを振り返ってみたい。 【動画】若い…!約34年前のウィノナ・ライダーも映った「シザーハンズ」予告 ■映画デビュー作が鬼才との出会いのきっかけに ウィノナは、1971年10月29日にアメリカ・ミネソタ州ウィノナで生まれた。名前は出生地にちなんで名付けられたという。映画デビュー作はコリー・ハイムやチャーリー・シーンが出演した青春映画「ルーカスの初恋メモリー」(1986年)。リナを演じるウィノナのみずみずしさも印象的だ。ティム・バートン監督はこの作品でのウィノナを見て、「ビートルジュース」のリディア役をオファーしたというから、デビュー作にしてこの作品は彼女のキャリアの中での重要作と言える。そして、その「ビートルジュース」(1988年)では、霊能力を持ち、幽霊が見える少女リディアを好演。どこか冷めた感じのツンツンした雰囲気のキャラをうまく表現し、作品の世界に溶け込んでいた。 その翌年、1989年公開の「ヘザース/ベロニカの熱い日」では、“ヘザース”という名のお嬢様3人組にこき使われる女子高校生ベロニカを演じ、転校生のJD(クリスチャン・スレーター)に協力してもらって殺人を計画するというブラックな青春コメディー作品。これもまたウィノナのハマり役となった。 同年に公開された伝説のロックンローラー“ジェリー・リー・ルイス”の半生を描いた「グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー」で、彼のスキャンダルの引き金となる13歳の幼な妻を演じたり、青春映画「悲しみよさようなら」で主演を務めるなど、美貌も相まってウィノナの注目度は非常に高かった。 そして人気を決定づけたのが、「ビートルジュース」に続いてバートン監督とタッグを組んだ1990年公開の映画「シザーハンズ」(ディズニープラスで配信中)だろう。純真無垢な心を持つ両手がハサミの人造人間エドワード・シザーハンズ(ジョニー・デップ)と、主人に先立たれた彼を引き取ったボッグス家の少女・キム(ウィノナ)の交流を描いた、美しくもファンタジックな純愛ストーリーは、世界中の人々を感動させた。両手がハサミということもあり、「抱きしめたくても抱きしめられない」というシーンにはもどかしさもあり、グッと引き込まれた。ウィノナとは長い付き合いのバートン監督の代表作の一つとして、今も多くのファンから支持されている作品だ。 「シザーハンズ」に始まった1990年代は俳優としてさらに躍進した時期となり、同年公開のシェールとの共演作「恋する人魚たち」で、ウィノナはゴールデングローブ賞の助演女優賞にノミネート。1993年の「エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事」では、名門アーチャー家の家長で弁護士のニューランド(ダニエル・デイ=ルイス)の婚約者メイ・ウェランドを演じ、ゴールデングローブ賞の助演女優賞を受賞。アカデミー賞の助演女優賞にもノミネートされた。 他にも「若草物語」(1994年)で次女のジョーを演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネート。Z世代ならぬ“X世代(ジェネレーションX)”を描いた「リアリティ・バイツ」(1994年)、17世紀の“セイラム魔女裁判”をモチーフにした「クルーシブル」(1996年)、エレン・リプリー(シガニー・ウィーバー)のクローンが登場する「エイリアン4」(1997年)など、毎年と言っていいほど、いい作品、いい役に恵まれ、充実した俳優生活を歩む。 一つ、転換期となる作品を挙げるならば1999年公開の「17歳のカルテ」。スザンナ・ケイセンの自伝をウィノナとアンジェリーナ・ジョリーで映像化した作品で、原作に惚れ込んだウィノナが映画化権を買い取り、主演のみならず“製作総指揮”にも名を連ねている。精神病院を舞台に自分の居場所を見つけようとする少女たちの青春ストーリーで、ウィノナはより深く映画に関わるようになっていった。 ■停滞期を経て…再ブレークへ 2000年代は私生活でもいろいろとあり、少し停滞する時期でもあったが、ウィノナの演技の再評価が始まったのは2011年の「ブラック・スワン」だった。ナタリー・ポートマンが、人間の明と暗の二面性を“白鳥”と“黒鳥”のパートで演じ分けて禁断の魔性へと変貌していくプリマドンナ“ニナ”を演じ、アカデミー賞主演女優賞を受賞。この作品でウィノナは、プリマドンナだったが、ニナの出現によってバレエ団から無理矢理引退させられるベスを演じた。ベスがニナに罵詈雑言を浴びせるシーンは鬼気迫るものがありつつ、悲哀も感じられた。 また2016年の配信ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で、ジョナサンとウィルの母親ジョイス・バイヤーズ役で出演。シーズン4まで配信されているが、この作品で完全復活を遂げた。 そして公開中の「ビートルジュース ビートルジュース」へとつながる。前作は36年前の作品ながら、ビートルジュース役のマイケル・キートン、母親デリア役のキャサリン・オハラと共にウィノナもリディア役で続投。バートン監督がウィノナの俳優としての良さを引き出していて、バートン監督の新ミューズと言われているジェナ・オルテガと親子を演じているが、このコンビネーションも素晴らしい。 「ビートルジュース」「シザーハンズ」といったティム・バートン監督作品で人気を確立し、「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」や「リアリティ・バイツ」「17歳のカルテ」などで演技の幅を広げたウィノナ。「ブラック・スワン」「ストレンジャー・シングス」で再び輝きを取り戻し、「ビートルジュース ビートルジュース」で新たな可能性を感じさせてくれた彼女が53歳の誕生日を迎え、これからどんな作品でどんな演技を見せてくれるのか、楽しみでならない。 ◆文=田中隆信