英保守党が新党首にベーデノック氏選出 ナイジェリア系黒人女性、党再生へ右派路線に転換
【ロンドン=黒瀬悦成】7月の英総選挙で野党に転落した保守党の次期党首選決選投票の結果が2日発表され、ベーデノック前ビジネス貿易相がジェンリック元移民担当閣外相を破り、新党首に選ばれた。ベーデノック氏は右派の政治家として知られ、保守党は伝統的な穏健保守路線を脱却し、移民や社会政策などでより強硬な主張を展開していくことは必至だ。 ベーデノック氏は勝利演説で「大変な栄誉だ。労働党政権に説明責任を課し、次回の総選挙に向けて国の改革に向けた明確な計画を打ち出す」と述べ、政権奪還への強い意欲を表明した。 ベーデノック氏はナイジェリア系移民を両親に持つ黒人女性。政敵への戦闘的な言辞で知られる一方で党内の融和を重視し、早くから首相候補に目されてきた。 同氏は人種的少数派や性的少数者の権利拡大などを過剰に要求する左派勢力が英国の伝統的価値を脅かしているとして、左派に対する「文化戦争」を唱えている。 党首選は、総選挙での大敗により当時のスナク前首相が党首辞任を表明したのを受けて実施された。当初は6人が名乗りを上げていたが、9月と10月に実施された下院議員による投票でクレバリー元外相ら中道派候補が相次ぎ脱落。残った2人から党員が選ぶオンライン形式の決選投票が10月31日まで行われた。 保守党の右派路線への転換は、同党の移民対策や社会政策を「手ぬるい」と見なした同党支持者の一部が7月の総選挙で、大衆迎合政治家のナイジェル・ファラージ氏率いる右派政党「改革党」に投票したことが直接の契機だ。 党内では、より強硬な移民対策などを打ち出すことで改革党から支持層を奪い返すべきだとの主張が強まっていた。 ただ、労働党は7月の総選挙で左派路線を捨てて中道に回帰したことで14年ぶりの政権奪還を果たしている。保守党を急激に右傾斜させれば、これまで党を支えてきた穏健派の支持者の離反につながりかねず、将来の政権奪還にはマイナスに働くと懸念する声も少なくない。 調査会社ユーガブが結果発表の当日に公表した世論調査では、有権者の間でベーデノック氏の支持率は12%にとどまる。同氏は他の党首選候補らに協力を要請したが、クレバリー氏は政権奪還をにらんだ「影の内閣」への参加を否定しており、党中道派との政策調整も課題となりそうだ。