少年法改正契機から16年 少年法の今を問う
果たして「法改正」はどれだけの意味があったのでしようか。また、「法改正」が最善の方法だったのでしょうか。 今回記事執筆にあたり、少年が入所していた関東医療少年院に関わる医師や医療観察法を専門とする弁護士等が参加し、東日本で活動する法と小児医療の研究会から幾つかコメントを戴くことができました。 元少年鑑別所の医師によれば「医療少年院の院長が、殺人未遂をした中学生と大学生に重大事件を起こした少年は刑事裁判にかけられることを知っているか、と聞いたところ彼らは知らなかった」といいます。また、同医師をはじめ、「そもそも厳罰化は立法を支える政策として行われたのであって、少年犯罪の解決には直接的には結び付かない」という意見も挙がりました。 法務省発行の『犯罪白書』によれば、少年刑法犯の数は、1983年以降ほぼ減少傾向にあります。しかし、これは少子化の影響があり、少年人口比で考えると、1983年には約1.6%、1990年代に一度1.2%程度になりましたが、再び上昇して2000年代には1.4%前後を推移しており、決して減少傾向であるとは言えません。 確かに教育の現場では、少年法や少年犯罪について扱われることは、ほとんどありません。法改正をする前に、現行法を知らせる努力ができたのではないか、というシンプルな疑問も浮かびます。もちろん「知ったところであまり変わらない」という意見もあると思いますが、ほんの少しでも変わる可能性があるなら、法や政策に任せるだけではなく、そもそも本当にそれが最善の方法であるのか前提を疑い考えること、また自分が出来ることを実践してみることで、身近な少年少女を守ることができるのではないでしょうか。 (矢萩邦彦/studio AFTERMODE) ---- 矢萩邦彦(ヤハギクニヒコ) 教育・アート・ジャーナリズムの相互企画デザインを中心に活動する日本初のアルスコンビネーター。1996年より予備校でレギュラー授業を持ちながら、全国で私塾『鏡明塾』を展開。小中高大学でも特別講師として平和学・社会学・教育学を中心に講演多数。代表取締役を務める株式会社スタディオアフタモードからは若手ジャーナリストを育成輩出、自らも2012年ロンドンパラリンピックには公式記者として派遣された。多分野の越境統合を目指して設立したスタディオアフタモード総合研究所では教育学・社会学・医学を中心に大学との共同研究も行っている。