期待の若手建築家・大西麻貴+百田有希を知っていますか?なぜか多くの人から愛される理由「建物だって生き物。生命が宿っているような建築を」
今、最も熱い視線を集める建築家ユニットo+h。2023年、世界最大規模の建築展ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展において日本館のキュレーションを務めたり、山形の児童遊戯施設「シェルターインクルーシブプレイス コパル」が日本建築学会賞を受賞したり。話題を集めています。 【写真集】期待の若手建築家・大西麻貴+百田有希インタビュー。2人の作品はなぜ愛されるのか? 企画展示や公共建築、住宅はもちろん、大西麻貴さんと百田有希さんの手掛ける作品はいつも、直感的に「いいな」と思わせる不思議な魅力を備えています。2人のつくる建物がなぜ人を惹きつけるのか、その理由を探ります。
発想力が光る住宅の代表作「House H」を紹介
2人の事例として取り上げる「House H」は、都内の住宅街に立つ夫婦2人のための住まいです。エレベーターを設置する、ということ以外、特に大きな要望のなかったプロジェクトにおいて、設計の手掛かりとなったのはその特徴的な敷地だったといいます。 3方を細い道路に囲まれた角地。大西さん、百田さんは敷地をぐるっと半周する道から発想を巡らせ、街から連続するもう1本の道=4本目の道を家のなかまで引き込むというコンセプトを導き出しました。 「新しい道」は建物の外周をらせん状に巻き上がるようになっています。それは玄関へのアプローチであり、各階の外階段であり、コージーなテラスにもなり…と、場所ごとに異なる特性を兼ねながら、屋上に設けた茶室の露地までつながっていきます。
室内空間も、らせん状がつくる立体的で複雑な形を生かした構成になっています。縦に横に、さまざまに性質を変えながら広がる変形の空間。その変化や特性に応答しながら、間取りや場のつくり方が検討されました。 「コーナーごとに居場所を考えて、その集積が家全体になっていくイメージです」と大西さん、百田さんは振り返ります。内部の層と外部の層、まるで花びらが折り重なるように空間を構想し、各コーナー(部分)と家(全体)が破綻することなく同時に成立する形を、大量の模型で検証しながら完成させたとのだといいます。 内外の中間領域的な「道」が家全体を取り巻いているだけでなく、室内にも細い隙間を抜けていくような階段があったり、窓辺にコージーなデイベッドコーナーがつくられていたり、大きな吹き抜けに面して書斎を設けていたり…。多様に用意された過ごす場所と動線を選び取るうちに、屋内と屋外の体験が入り交じる家になっています。