NHK震災証言映像、東日本大震災から4年目の課題
アーカイブスの年間アクセスで圧倒的に多いのがやはり3月。そのため、この時に必要とされている証言をタイムリーに提供しようと、震災4年を前にリニューアルすることを決めた。3・11に自然とアクセスが集まるとしても、明確な目的を持たない利用者にどう証言映像を伝えればよいのか? キーワードは「まとめ」だ。 震災の翌年に始まったこのサービスは、「映像の見方は見る人が決める」という方針で始まった。それ以来、NHKが個別の証言に意味を持たせるような演出は避けてきた。しかし、利用者に映像を利用してもらうためには、ただ並べておくだけでなく、アーカイブ映像に「意味」を持たせて、“おすすめ”をすることが必要なのではないかという結論に至った。 数ある映像のなかから、どの映像が最も印象的で、いまこのタイミングで伝える価値があり、見てもらうべきか。これは、いわゆる「キュレーション」だ。キュレーションというのは、ただのピックアップやランキングを見せることは違う。NHKがどの証言映像が重要なのかという価値判断をし、なぜ重要なのかという意義付けをして紹介する。これまでの方針を転換する大きな決断だった。 印象に残る証言をメンバー全員で出し、まとめのテーマを決めた。「救えなかった命」というテーマでは「あの時こうしていれば……」という回顧と反省を軸に映像を組み立てた。このほか初動に役割を果たした「消防団員の活躍」や「津波にのみこまれて」「避難所での生活」など11のテーマで表現する。 震災映像だけでなく、被害から復興に向かう映像もまとめた。こちらは「三陸鉄道」「奇跡の一本松と高田松原」「原発事故後のくらし」など8テーマ。倉又プロデューサーは「たとえば『三陸鉄道』というテーマを立てることで、点である個々のニュースを時系列に並べることで線や面に見えてくる」と立体的に構成していくことに意欲を見せる。 「これまで証言映像の本数を求めてきましたが、それではいけないということが分かりました。アーカイブスは見てもらうことがゴールではありません。これを活用してもらってはじめてアーカイブスが生きてきます」と話している。