大差と僅差で10年目のCS見直し論議が再燃?! 球界大御所は廃止を主張
セ・リーグは、広島が巨人に15ゲーム差をつけて、ぶっちぎりで優勝、一方のパ・リーグは、日ハムとソフトバンクが、最後まで熱いデッドヒートを繰り広げて日ハムが142試合目に4年ぶり7度目の優勝を決めた。 そして、いよいよ、日本シリーズへの進出権をかけたクライマックスシリーズのファーストステージが8日からセ、パ同時にスタートする。 しかし、15ゲームもの大差と、最大11・5ゲーム差を大逆転しての僅差の勝利と、両リーグが対照的なフィナーレを迎えたことで、10年目を迎えるクライマックスシリーズの見直し論が再燃している。 CS導入の理由のひとつに、今季のセ・リーグのように大差で優勝が決まったケースで、残り試合を消化ゲームとしないという狙いがあり、実際、横浜DeNAとヤクルトの3位争いは注目を浴びた。だが、一方で、これだけ圧倒的な強さで、25年ぶりの優勝を果たした広島が、日本シリーズへの出場権をすぐに得られないのは、おかしいのではないか、という議論がある。 またパ・リーグの場合は、精魂尽き果てるような歴史的な優勝争いを最後まで演じた両チームが、すぐに再び、CSで、あいまみえることに意味があるのか、優勝した日ハムにモチベーションが残っているのか、などの問題を浮上させることになった。栗山監督は、「忘れものをとりにいきたい」と4年前に巨人に敗れた日本シリーズ進出への意欲を口にしているが、ここで、日ハムがCSで敗れるようなことにでもなれば、レギュラーシーズンの大逆転勝利が色褪せてしまう。これだけの熱戦を勝ち抜いた日ハムが、再度、緊迫の戦いを行わねば、日本シリーズの権利を得ることのできないCSについて、見直し論が再燃するのも、ある意味、もっともなのかもしれない。 その渦中で巨人OBで、元ヤクルト、西武監督を務めた球界大御所の広岡達朗氏はCS廃止論を主張する。 「私はクライマックスシリーズの廃止をずっと訴えてきたが、今回の広島、日ハムの優勝で、クライマックスシリーズが不必要であることが再認識されたのではないか。広島は2位の巨人に大差をつけて絶対的な力の差を示した。一方、日ハムはソフトバンクとの稀にみる激戦を勝ち抜いた。最後は、まるでトーナメント戦のような熾烈な戦いではなかったか。そこを勝ち抜いたチームが、今さら、クライマックスシリーズを戦う意味はない。広島への挑戦権は、巨人、横浜DeNAにはないだろう。結果論として優勝チームがCSを勝ち進めばいいのでは、というような問題ではない。歴史のある日本選手権の価値を下げることになる。営業面での効果は理解できるが、コミッショナーがもっとリーダーシップをとって議論を深める必要があると思う」 中日の落合博満GMが、監督時代に「レギュラーシーズンを優勝したチーム同士の日本シリーズでないと戦う意味がない」という現場の意見を口にしていたことあるが、現場ではCS廃止を訴える意見は少なくない。 ただ、“鼻差”で優勝を逃したソフトバンクの工藤監督は、本拠地最終戦を終えると、「我々の戦いはこれからです。必ず日本一になります」と、クライマックスシリーズでのリベンジをファンに誓った。 CS初出場となった横浜DeNAのラミレス監督も、最終戦でファンに対して、CSを勝ち抜くことを誓い、ベイスターズのファンは、本拠地開催は実現できなかったが、大きく盛り上がっている。 ファンの野球への関心を10月の季節にも続けて持ってもらうためには、CS開催の意義は大きいだろう。メジャーリーグもプレーオフの戦いをメーンにすえている。だが、30球団で頂点を決めるメジャーのポストシーズンの戦いと12球団でレギュラーシーズンを戦う日本のそれを単純比較することは難しい。 広岡氏の意見は極論だが、例えば10ゲーム差以上の優勝の場合は、CSを中止するなり、現在の1勝のアドバンテージを2勝にするなど、なんらかの“手直し”“見直し”は必要かのかもしれない。 節目の10年を迎えたタイミングでもあり、広岡氏が主張するように、内輪のセ、パの実行委員会などで意見を出し合うだけでなく、コミッショナーがリーダーシップをとって、幅広く識者を集めて、ファンにオープンな形で、問題点を洗いだして、見直しの議論を深めるなどの作業も行う必要もあると思う。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)