祝30周年!『パワフルプロ野球』伝説! 開発に携わった4人が語る、人を惹きつける魅力の源とは?
西川 前例がなかったので、球場デザインの使用許可を問い合わせたら向こうの担当者も初めてで。お互いに経験がないし、使用料の相場もない。 ある球場では担当者が「そんなのわからへん」って言って奥に引っ込んでいって、帰ってきて「○○円で!」って即答したり、また別の球場は「(売り上げの)○○%で!」って答えたり(笑)。 実況に関しては、なるべく臨場感のあるリアルなものを目指そうとしていたのですが、サウンド班から「全員の名前を言うウグイス嬢だけか、実況だけか、どっちかにしてくれ」って言われたんです。ゲームのROM(データを保存する領域)の都合で。 ただ、開発を進めていたら、社内で「このゲーム、なかなか面白くなりそうだぞ」って話になり、ROMを大きくしてくれることになったんですよね。 豊原 容量を増やしてくれることになり、「それだったら音声が両方とも入る!」って飛びついた感じでした。 西川 当初の企画段階では8(Mb/メガビット)だったんですけど、途中で12になって、最終的には16になりました(2000KB/キロバイト)。ROMが大きくなるって話から、安部(憲幸)さん(当時ABCアナウンサー)が決まったんでしたよね? ラジオみたいな実況にしたいって話で。 豊原 最初は仮で社員の音声で収録していましたからね。 西川 でもウグイス嬢は最後まで社員でしたよ(笑)。野球好きな人だったので、喜んでやってくれましたけど。 豊原 デザイナーの女性の方ね。バスガイドのバイトをしたことがある、みたいなことを言っていた気がします(笑)。 ■「シナリオ」「ペナント」、特殊能力の生まれ方 ――また、ほかのゲームにはなかった「シナリオ」というモードも画期的でした。これがゲームとしての面白さをさらに引き上げているように思いました。 豊原 実は、「シナリオ」モードの構想は『生中継68』のときにもありました。というのも、あの頃の野球ゲームって、対人戦で遊ぶのが当たり前で、コンピューター相手はただの練習に過ぎなかった。 「ひとりで遊んでいても面白いものが何かできないかな」と思って、シチュエーションを作ってクリアするっていうゲームを考えたんです。けれど、『生中継68』のときに入れようという案は出たものの、結局は入れなかったので、『パワプロ』で対応したっていう流れでした。 ――2作目『パワプロ2』(95年)から「ペナント」モードが実装されます。現在でも「パワプロ」においては何十年かペナントを走らせてシミュレートするプレイも盛んに行なわれている人気モードのひとつですが、そんな「ペナント」モードはどのように生まれたのでしょうか?