北朝鮮の“なりすまし装備”が展開される可能性も…北朝鮮の“ロシア派兵”韓国にとって“奇貨”となるか
韓国は“自衛のための情報収集”に乗り出すのか
北朝鮮メディアは、韓国や日本の一部を射程としうる火星11A(KN-23)変則機動・短距離弾道ミサイルに“火山31”核弾頭を搭載して、核ミサイルにすることを明言している。 その火星11A(KN-23)は、発射後コンピュータ・プログラムに従って噴射の向きを調整して機動し、ミサイル防衛を避けて標的を目指すミサイルで、2024年1月からロシアがウクライナ攻撃に使用したミサイルでもある。 ウクライナ当局は、火星11Aミサイルの残骸を調べた結果として、「(ロシア製の)イスカンデル短距離弾道ミサイルにはEW(電子戦)に対する保護としてワイヤーの巻線があるが、火星11A(KN-23)にはそれがなく、ワイヤーが通っているだけだ」(UKINFORM6月1日付)との分析結果を公表した。つまり、韓国や日本を射程とする核ミサイルになるかもしれない火星11A(KN-23)は、電子戦対策がなされていないので、飛行中に強力な電磁波を照射されれば、発射前にインストールされたプログラム通りには飛べなくなる可能性があったということなのだろう。 もちろん、そのような問題点は北朝鮮やロシアに修正された可能性もあるが、他にも欠点があるかもしれない。それが分かれば、火星11A(KN-23)ミサイルを韓国や日本に着弾させないことにつながるかもしれない。ミサイルが届かなければ、核爆発による直接的な被害を免れたり、極小化できるかもしれない。北朝鮮のミサイルの残骸を調べ、それを入手することを、韓国政府が自国の防衛にとって急務と考えても不思議ではないだろう。 ちなみに、韓国国情院のプレスリリースには、ロシア軍が使用している火星11A(KN-23)以外の北朝鮮製兵器の画像も添付されている。こうしてみると、その画像は、韓国が自国の防衛のため、ウクライナの戦場で調べたい、入手したい“欲しいものリスト”のようにもみえてくる。 さらに、「(韓国)政府はまた、直接的な殺傷兵器の援助を行わないという政策からの転換として、ウクライナへの武器支援も検討している。…北朝鮮とロシアの軍事協力の兆候を見守りながら、段階的に対応策を講じていく」(聯合ニュース 10月20日付)とも報じられている。 韓国では、新型の玄武5型弾道ミサイルが量産に入っているが、射程は不明ながら「玄武5型の最大弾頭重量は8トンに達する。最近、北朝鮮が公開した『超大型通常弾頭(4.5トン)』を搭載したKN-23改良型のほぼ2倍で、地下100メートル以上深く隠れた北朝鮮の指揮部バンカーまで破壊できる威力」(韓国・東亜日報9月30日付)という。ウクライナに供与されるかどうかはともかく、韓国はこんな巨大ミサイルを生産しているのだ。 ロシアが北朝鮮軍をウクライナ軍との戦いに本格的に投入するなら、韓国はその“なりすまし”装備や部隊を調査し、入手したくなるだろう。さらに、韓国も精鋭装備をウクライナに投入するかもしれない。ウクライナ軍とにらみ合う戦場に大量に送り込まれた北朝鮮軍の将兵が捕虜となり、ミサイル等の装備等とともに消耗されれば、韓国が半島で対峙する北朝鮮戦力が減少することになるかもしれない。 言うまでもないが、事態の推移は、日本の安全保障にとっても無関係ではない。 (フジテレビ特別解説委員 能勢伸之)
能勢伸之
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