隕石から火星の生命に関する新たな手掛かり、44億5000万年前の水の痕跡見つかる
「タイムカプセル」としての鉱物
火星にどれだけの水が存在したのか、あるいは生命が存在したのかなど、火星について残された最大の疑問の答えを握っているのは岩石かもしれない。ブラック・ビューティーのような隕石が科学者にとって興味深いのはそのためだ。 共著者のカーティン大学宇宙科学技術センターのアーロン・カボジー博士によれば、ブラック・ビューティーには何百もの岩石や鉱物の破片が含まれており、それぞれが45億年にわたる火星の歴史の異なる部分を保持している。「(それは)プレノアキアン期の火星の地質学的パズルの唯一のピースだ」 カボジー氏によれば、ノアキアン期は41億年前から37億年前で、45億年前から41億年前にさかのぼるプレノアキアン期の直接的な測定からはほとんど何もわかっていないものの、火星の最初のページとなるため、理解することが非常に重要だという。 ブラック・ビューティーはその秘密の一端を明らかにした。隕石に含まれる岩石の破片の多くは、火星の地殻が衝突に何度も耐えて、地表に大規模な隆起を引き起こしたことを示している。 カボジー氏によれば、ブラック・ビューティーには最古のジルコンを含む、火星で知られている最古の破片も含まれている。 宝飾品や医療用インプラントなどに使われるジルコンは、科学者が過去を調べて、当時の温度や水との相互作用の有無など、結晶化したときの条件を判断するのに役立つ丈夫な鉱物だ。 ガレスピー氏によれば、ジルコンには自然の「時計」として機能するウランが含まれている。このため、ウランと鉛の比率を比較することで、結晶が形成された年代を計算することができるという。 ジルコンの粒子を分析するなかで、異常な量の鉄やナトリウム、アルミニウムが検出された。これは、44億5000万年前にジルコンが形成されたとき、水分を多く含む液体がこれらの痕跡をジルコンの上に残したことを示唆している。こうした元素は通常、結晶質のジルコンには存在しないが、原子レベルの研究では、元素が結晶構造に組み込まれ、市場のフルーツスタンドのように並んでいることがわかった。 「(鉄、アルミニウム、ナトリウムが)ジルコンの内部でどのように検出されるのかといったパターンから、それらがタマネギの層のように成長するにつれ、ジルコンの粒子に組み込まれたことがわかった」(カボジー氏) 地上では、熱いマグマの上昇など地下の火山活動によって水が加熱されるときに形成される熱水系のジルコンがブラック・ビューティーで見つかったものと同様のパターンを持つ。 44億5000万年前の火星の地殻に熱水系が存在していれば、液体の水が地表に到達した可能性がある。 「地球上での我々の経験では、生命を維持できる生息地には水が不可欠であることが示されている。地球上の多くの環境では、温泉や熱水噴出孔などの熱水系に生命が存在している。こうした環境が地球上で最も初期の生命体を誕生させた可能性がある。我々の新しい研究では、プレノアキアン期の時代には、火星の地殻が暖かく湿っていたことを示唆しており、これは当時、居住可能な環境が存在していた可能性をあることを意味している」(カボジー氏)