「太陽を抱く月」

キム・スヒョンが主演を務める韓流ドラマシリーズ「太陽を抱く月」(Huluにて配信中)。2012年に全20話が放送された大人気ドラマシリーズである同作は、朝鮮王朝の架空の時代に繰り広げられる宮中ラブストーリーを描いた作品だ。第17話では、さまざまな苦しみや悲しみを乗り越えて、とうとうイ・フォン(キム・スヒョン)がホ・ヨヌ(ハン・ガイン)が結ばれる。(以下、ネタバレを含みます) 【写真】兄弟の決別が決定的に…キム・スヒョン“フォン”「もう2度と…望まないでください」 ■1つの恋の決着 夜、活人署ではヤンミョングン(チョン・イル)がホ・ヨヌのもとから離れようとしていた。家の外まで見送りに来ていたホ・ヨヌに、「見送りは不要だ」というヤンミョングン。うなずいて戻ろうとするホ・ヨヌに、ヤンミョングンは「お前、突然消えたりは――しないよな」と問う。 ホ・ヨヌは罪人の身分では逃げられないだろうと答える。宮廷の権力争いで死に見舞われたホ・ヨヌのことを思い出しているのだろう。ヤンミョングンはホ・ヨヌが罪人の巫女であることを良かったとつぶやきつつ、その場をあとにする。しかしその帰り道、ヤンミョングンは3人の男とすれ違う。そして彼らが殺気を纏っていることに気付くのだった。 ヤンミョングンがホ・ヨヌのもとを離れたあと、ホ・ヨヌのもとへやって来たのは8年前の“ホ・ヨヌの死”について全容を知ったイ・フォン。イ・フォンはホ・ヨヌに会いに来たことを告げると、気付くのが遅れてしまった自分が愚かだと語りながら、泣き崩れるホ・ヨヌの身体を抱き締める。 嗚咽を漏らすホ・ヨヌと、彼女をしっかりと抱き締めるイ・フォン。その姿を、心配して戻って来たヤンミョングンがまたしても目撃してしまう。ヤンミョングンは涙を浮かべながらその場を離れようとするのだが、そこにキム・ジェウン(ソン・ジェリム)が現れる。言葉を詰まらせるヤンミョングンに、人差し指を唇に当てて静かにするようにうながすキム・ジェウン。背後からやってきていたヤンミョングンへの刺客たちに奇襲をかけて撃破すると、キム・ジェウンはイ・フォンらのもとへと向かうのだった。 襲撃者は先程の男たちだけではないようす。数名の男がイ・フォンとホ・ヨヌを襲おうとした瞬間、キム・ジェウンとヤンミョングンが2人の窮地を救う。戦闘ではヤンミョングンが負傷してしまうのだが、敵の増援が送られてくる。 ヤンミョングンを一瞥し、うなずいたイ・フォン。キム・ジェウンとともに剣を振るって襲撃者に対応するが、ヤンミョングンはホ・ヨヌの手を引いて急ぎ避難する。襲撃者を退けたあと、キム・ジェウンは危険なときは空き家に避難するように伝えてあるとイ・フォンへ告げる。2人はヤンミョングンとホ・ヨヌの姿を捜索しつつ、今回の襲撃について頭をめぐらせていた。 今回の襲撃を指示したのは、長らくイ・フォンらと政争を繰り広げてきた外戚派の首魁ユン・デヒョン(キム・ウンス)。ヤンミョングンとキム・ジェウンによって取り逃がしたという報告を受けたユン・デヒョンは「何としても女(ホ・ヨヌ)を捕らえねばならん。そして星宿庁の国巫チャン氏を秘密裏に消せ」と、ホ・ヨヌとチャン・ノギョン(チョン・ミソン)の命を握るべく指示を出す。 ヤンミョングンがホ・ヨヌを連れて逃げ込んだ先は、母であるパク氏のもとだった。傷の手当てを受ける。キム・ジェウンはそのようすを見ていたのだが、イ・フォンへの報告では正しい居場所を伝えない。友人であるヤンミョングンの気持ちを知っているために、心が揺らいだのだ。しかしイ・フォンはキム・ジェウンが自身に隠れて外へ出ていたことに気付いているようすで、「お前のための湯だから入れ」「王命だ」と静かに促した。 「背いたら不忠だぞ」と語る横顔に笑顔はない。「冷気が私に伝わっても不忠だと言える。それに私とヤンミョングンの間で揺れることは謀反だ」と嘘を見抜いていると伝えたうえで、キム・ジェウンを誰よりも大事にしている気持ちも明かした。「だからそう苦しむな。苦悩の声が伝わってくる」そう言い残して浴場をあとにする。 翌日、目を覚ましたヤンミョングンはホ・ヨヌとの時間を過ごしていた。少し前からウォルがホ・ヨヌであると気づいていたこと、そしてそれに気付かないふりをしていたかったこと…そして活人署での短い期間がとても幸せだったと微笑みかける。ホ・ヨヌもまた、現実に絶望する度にヤンミョングンに照らされ、救われてきたと語る。 しかしそれでいて、ヤンミョングンの望む答えは出せないと続けるホ・ヨヌ。自分から解放され、他の出会いを掴んで幸せになってほしい…「これがヤンミョングン様に申し上げられる気持ちのすべてです」と別れを告げたホ・ヨヌの手を、ヤンミョングンが掴む。 「前の人生では、王様の女だった。今回くらいはそばにいてくれ。…だめなのか？」すがるような言葉に答えた「だめです」という声は、ホ・ヨヌのものではなかった。振り向いたヤンミョングンの目に映ったのは、厳しい表情を浮かべたイ・フォンだ。 ■イ・フォンが見せる覚悟を前に、震えるヤンミョングンの手 キム・ジェウンを伴ってやってきたイ・フォンは、強引にヤンミョングンとホ・ヨヌの間に割って入る。彼女の手を取っていたヤンミョングンの手を引き剥がすと、ホ・ヨヌを連れて行くようにキム・ジェウンへ指示を出す。その場にはイ・フォンとヤンミョングンだけが残される。 “王の女”との逃走は謀反に当たるとしながら、イ・フォンは2つ持っていた刀のうち1つをヤンミョングンへ投げ渡す。罰するつもりかと問うヤンミョングンに、イ・フォンは「兄上に――王を斬る機会を与えます」と意外な言葉を告げる。「今この場所で私の首を斬ることができたら、兄上は王になれます」そう言って刀を抜いたイ・フォンと、応じるように剣を抜くヤンミョングン。あまりにも悲しい兄弟の闘いだが、実力差は歴然としている。そしてそのことに、イ・フォンが気づいていないはずはないのだ。 決着はすぐについた。幼い頃と同じように、ヤンミョングンの剣がイ・フォンの首を捉える形で。しかしイ・フォンの首筋に刃が触れる直前、ヤンミョングンの剣は止まっていた。「斬るのです」と言葉を投げかけるイ・フォン。刀を持つ手が震えるばかりで動けずにいたヤンミョングンに対し、「ためらわず斬ってください！」とイ・フォンは言いつける。しかしそれでも、ヤンミョングンはイ・フォンを斬ることができなかった。 どれだけの悪感情を抱いていても、王であり異母弟であるイ・フォンをその手にはかけられない。刃を引き、背を向けるヤンミョングン。その背中に、イ・フォンは「機会を逃したのですよ。もう2度と…望まないでください」と投げかける。 自身の部屋へと戻ったイ・フォンは、ようやくすべての嘘を取り払って再会を迎えたホ・ヨヌと向かい合う。たまらず駆け寄って抱き締めると、未だ表舞台には立てないホ・ヨヌと扉を1枚挟んでの生活が始まった。 8年間他の女に目もくれなかった我慢強いイ・フォンだが、ホ・ヨヌの読む本に嫉妬するような言葉が出る一幕も。幼い頃のような小競り合いは、やっと掴み取った平和の象徴。しかしイ・フォンとホ・ヨヌの甘い時間は長くは続かなかった。チャン・ノギョンに騙されていたことを知ったユン氏が、イ・フォンを訪ねてやってきたのだ。 ヒョンソンの機転によってホ・ヨヌの身を隠すことには成功したが、ユン氏はウォルを助けた際に出した条件「願いを聞く」という約束を切り出す。その願いとは、チャン・ノギョンとウォルを探し出すこと。イ・フォンは先王・ソンジョ(アン・ネサン)が語らずに秘したものを暴こうとしているとして、8年前の真実を追うことをやめるように告げる。イ・フォンは、ユン氏の願いごとに了承したうえで、時間がかかることを告げた。 夜道を歩きながら、イ・フォンはホ・ヨヌと言葉を交わす。ホ・ヨヌは先王がユン氏らの謀略を隠したのには理由があるはずで、その真実がイ・フォンを傷つけることが恐ろしいと思うこと、そしてイ・フォンのそばにいる以外に望みはないと語る。 そんなホ・ヨヌの手を取り、イ・フォンは足早に部屋へ向かう。ここで決断をするたびに“ホ・ヨヌなら、そして師であるホ・ヨムならばどうするか”といつも考えていたと明かし、袖から8年前に渡した"太陽を抱く月"の対になる飾りを取り出す。「これはもともと1対だ。1つは前にやった。残りは…そなたがきさきになる日、ここで渡すつもりだった」そして活人署にあったというホ・ヨヌの荷物からかつて渡した1対を取り出すと、1対の“太陽と月”をホ・ヨヌの手に渡す。 「やっと…1つになったな」イ・フォンは8年のときを経てそろった“太陽と月”に涙を浮かべ、そっとホ・ヨヌに口づけをするのだった。 ■甘い時間の裏にこびりつく闇と謎 第17話では、真実に辿り着いたイ・フォンがホ・ヨヌとの平和を再び手に入れた。気になるのは、あれほど想い続けてきた恋が決着を迎えたヤンミョングン。公正な戦いの末、勝ったヤンミョングンに自身の首を斬るよう大喝したイ・フォンだったが、あまりにも胸の苦しくなる作戦だ。ヤンミョングンの優しさにも、イ・フォンの覚悟にも喉の奥が詰まるような重さを感じた。 さらにまだまだ暗躍を諦めないユン氏やユン・デヒョンら外戚派。不穏な要素はたっぷりと残っており、ここからどう展開するのかはまだわからない。ソンジョが外戚派らの謀略を黙して語らなかった秘密とはいったい何なのか、イ・フォンたちは真相にたどり着くことができるのだろうか。 8年の時を超えて2人がようやく結ばれた「太陽を抱く月」。Huluにて全20話が配信中だ。