【GQ読書案内】自己と向き合い、創造する力を養う!──クリエイティブを考える7冊
編集者で、書店の選書担当としても活動する贄川雪さんが、月に一度、GQ読者におすすめの本を紹介。今月は「クリエイティブを考える」がテーマ。 【写真を見る】創造する力を養う7冊をチェック!
『GQ JAPAN』6月号の特集は「GQ Global Creativity Awards(グローバル・クリエイティビティ・アワード)」です。創造力で世界を動かし変えようとする人たちを讃えるグローバルプロジェクトで、2回目となる今年、日本では音楽、ファッション、アート、建築、陶芸、映像の分野で活躍する6名が選出されました。今月は本誌の特集と連動して「クリエイティブ」をテーマに、新刊もロングセラーも含めたおすすめの本を紹介します。
天才クリエイターたちの知られざる習慣
メイソン・カリー『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』(訳=金原瑞人、石田文子、フィルムアート社) ビジネス書も含めれば、「クリエイティブ」にまつわる本は星の数ほど存在する。そんななかで、フリーランスライターのメイソン・カリーさんの著書『天才たちの日課』が最初に思い浮かんだ。 本書は、古今東西、過去から現在まで。作家や詩人、音楽や映画や絵画などの芸術家、思想家や政治家、哲学者や心理学者、数学や生物学の研究者、精神科医など、さまざまな分野でクリエイティブな仕事を残した161人の天才を取り上げる。そして、彼らが創造性や生産性を高めるために、1日をどんなスケジュールで過ごしていたかを紹介する。1人につき平均2ページほどにまとめられ、たくさんの天才たちの仕事の秘訣あるいは奇妙な習慣と振る舞いを一気に垣間見ることができる。 作曲家だけを見ても、その日課はじつに多様だ。ストラヴィンスキーは必ず毎日誰にも聞かれないように作曲をし、行き詰まると三角倒立をした。ベートーヴェンの朝食は、必ずきっちり豆60粒のコーヒー。変わった手洗いの習慣があり、午前の仕事の合間には手を洗いながら音階や鼻歌を大声で唱え、床に大量の水をこぼされる家主と揉めた。マーラーは、妻や使用人たちの努力によって、雑音などあらゆる“不純物”が取り除かれた作曲小屋にこもって仕事をした。そしてシュトラウスは“雌牛が乳を出すように”毎日整然と創作し、苦悩とはまるで無縁だったという。 偉大なクリエイターたちの、私的で知られざる暮らしと制作の日々、産みの苦しみの過程を知れば知るほど、彼らに親近感が湧いてくる。あるいは、あの大作の裏にこんな悪癖や苦悩の日々が……と知ると、作品の見方もまた変わってくる。ルーティン(習慣)という言葉には、どこか「平凡さ」「思考停止」「惰性」といった、独創性とは真逆のニュアンスがある。しかし、こうしたルーティンの積み重ねこそがクリエイションにつながっていることに、あらためて気づかされる。