【GQ読書案内】自己と向き合い、創造する力を養う!──クリエイティブを考える7冊
分野を越えて活躍する
ブルーノ・ムナーリ『ファンタジア』(訳=萱野有美、みすず書房) ブルーノ・ムナーリ『モノからモノが生まれる』(訳=萱野有美、みすず書房) クリエイターと言われたら、誰を思い浮かべるだろう。例えばすぐに思いつくのは、イタリアの芸術家ブルーノ・ムナーリだ。美術家、プロダクトやグラフィックのデザイナー、絵本作家、教育者など多岐に渡る分野で活躍し、さまざまなかたちで作品を残している。 著書『ファンタジア』は、まさに「創造力(クリエイティビティ)ってなに?」から始まる1冊だ。ムナーリは、創造力、発明、想像力以外のもう一つの人間の能力が、何よりも自由な能力=“ファンタジア”であり、これらを自由に働かせることができれば、人はみなクリエイティブになるという。また『モノからモノが生まれる』では、料理や家具、アクセサリー、本、車、建築など、さまざまなモノの具体的な成功例/失敗例を挙げて検証しながら、企画設計の方法論を言葉豊かに解説する。 柔らかな感受性と鋭い論理性を併せ持つムナーリは、既存のモノを日々観察し研究するというルーティンを積み重ねることで、新たなモノを生み出し続けた。私たちはつい、突飛な発想、反対に一定の才能やセンスがなければクリエイティブになれないと思いがちだ。しかしムナーリの言葉には、誰しもがクリエイティブになれると背中を押してくれるような、不思議な力がある。この先何度でも読み返したい本だと思う。
分野を越えて影響を及ぼす
クリストファー・アレグザンダー『パタン・ランゲージ 環境設計の手引』(訳=平田翰那、鹿島出版会) クリストファー・アレグザンダー『形の合成に関するノート/都市はツリーではない』(訳=稲葉武司/押野見邦英、鹿島出版会) 個人的にもう一人思い浮かべたのは、ウィーン出身の都市計画家・建築家であるクリストファー・アレグザンダーだ。誰もがデザインに参加できるための理論「パタン・ランゲージ」を提唱し、その理論は自身の専門である都市計画や建築以上に、プログラミングやソフトウェアデザインの分野に大きな影響を与え援用された稀有な人物だ。 『形の合成に関するノート/都市はツリーではない』は最初期の論文であり、『パタン・ランゲージ』は人間が心地よく感じる空間や場(パターン)を収集したカタログのようなもの。どちらも難解ではなく、現在もプログラマーやさまざまな分野のデザイナーに読み継がれている著作なので、敬遠せずに手にとってほしい。ムナーリとも通じると思うのだが、アレグザンダーがやろうとしたことも、曖昧で感覚的なセンスのようなものの有無にかかわらず、誰もがクリエイティビティを発揮できるための理論づくりだったのではないだろうか。