ドラフトウラ話《オリックス3位指名》「山口はもう1人いるから…」“193cmの無名ピッチャー”は指名の瞬間思わず「マジで?」…記者が完全密着「僕は指名されるかわからない選手」
今年のドラフト会議でオリックスから3位指名を受けた仙台育英高、山口廉王(18歳)。身長193cm、体重97kgの超大型右腕。甲子園出場経験がなく、驚くべきことにピッチャーを始めてたった1年という“ナゾの剛腕”の正体とは……現地仙台で直撃取材した。【全3回の前編/中編、後編も公開中】 【現場写真】「マジで?オレ?」山口廉王が指名され本人ビックリの瞬間&涙、涙の記者会見、ダイナミックすぎる193cmのピッチングまですべて見る ◆◆◆ 絵に描いたような「予期していなかった顔」だった。 〈第3巡選択希望選手、オリックス、山口……〉 モニター越しにバリトンを思わせる伸びのある声が響く。山口廉王の太い眉毛が大きく跳ね、口をすぼめた。 〈……廉王〉 ガッツポーズは2段階だった。「廉王」の名前が聞こえた瞬間も山口は信じられないといった様子でまずは頭の横まで両拳を掲げ、チームメイトが大歓声を上げているのを確認してから、やや遠慮がちに腕を伸ばした。 「マジで?」 山口の口がそう動く。その後も山口は何度となく両手で頭を挟み、夢と現実の狭間を行ったり来たりしているようだった。そして、喜びのあまり、目を潤ませた。
「山口という選手はもう1人いるから」
10月24日、場所は仙台育英高校のグローリーホールの一室。野球部員70名弱と取材陣約20名が見守るなか、ドラフト会議は、午後5時過ぎから1巡目指名が始まった。 6時5分、ヤクルトが3巡目指名を終えると、山口はペットボトルに口をつけた。ドラフト開始から1時間ほどで500ml以上は入っていたと思われる水はすでに3分の1程度しか残っていなかった。 横では監督の須江航が何かを念じるように目を閉じていた。 オリックスの3位指名選手がアナウンスされたのは、その数十秒後だった。 山口が「山口……」と呼ばれた時点で早合点しなかったのには理由がある。ドラフト会議が始まる直前、パソコンで何かを確認していた須江は、ふいに「ドラフトを楽しむために言っておくと……」と会場に集まった野球部員らに話を始めた。 「あー、いた。山口という選手はもう1人いるから」 ネット上でプロ志望届提出者のリストを眺めているようだった。 「山本、山城、山下、山田……。『山』はいっぱいいるな。『山』の時点では、まだぜんぜん喜べないな」 須江はそう説明しながら、最終的には「廉王」と下の名前を読み上げられるまでは確定ではないことをそれとなく示唆していたのだ。 ドラフト会議を経てプロ入りする場合、学生は事前に志望届の提出が義務づけられている。しかし、社会人野球や独立リーグの選手はそういった手続きは必要ない。なので「山口」という候補選手は他にもいる可能性があり、よっぽど珍しい苗字でなければ上の名前だけで判断することはできないのだ。 山口は須江のアドバイスを忠実に守ったのである。
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