人手不足を解消するには? いや増す「人材への投資」の重要性
事業と人材のループを強める
皆さんは人事戦略が進んでいる会社としてどのようなところが頭に浮かぶでしょうか。本書の紹介を参照すると、社員を自律的なプロフェッショナルと考えるSOMPOグループや、社員の挑戦や自律的なキャリア形成を尊重するロート製薬などは、先進的な取り組みに積極的だと言えそうです。 また、メガベンチャーからはメルカリやサイバーエージェントも、先進的な人事制度が多い印象があります。それぞれ優れたビジネスモデルがあることに加えて、実際に人材力の点でも評判が高く、まさに人材戦略が経営戦略をドライブしている好例だと考えられます。 最近私自身、事業活動の中で、人事部門の責任者にお会いする機会が多くあります。その打ち合わせの印象から、この会社はいきいきと働いている人が多そうだと感じることがあります。もし自分が投資家の立場であれば、将来有望な企業を見つけていくためにはCEOやCFOだけでなくCHROにも会いたいと考えるだろうと感じました。 海外の先進国と比べて日本の給与水準は相対的に低迷しています。優秀な人材を惹きつけるためには、今後国内企業も海外を含めた同業他社を意識した給与水準を提供することが求められます。ただ、やみくもに給与を上げるのではなく、人材の能力開発を真剣に進めていった上でその能力に見合った給与水準にしていくことが自然な形だと言えます。 経営者が持つべき基本的な素養としても、事業戦略や財務戦略に加えて、今後は間違いなく人事・人材戦略が求められていくでしょう。その中核となる人的資本経営の基礎を理解するために、本書は適切な指針になります。今後経営層を目指す方や、組織を束ねる役割を担う方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
大賀康史(フライヤーCEO)