人手不足を解消するには? いや増す「人材への投資」の重要性
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。 こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。 【図】上司による「害のある」フィードバックの特徴 今回、紹介するのは『人的資本経営まるわかり』(岩本隆、PHP研究所)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
人的資本経営が今注目される背景
今まで長い間、人材育成や組織開発は主に人事部長や人材開発部長の仕事と考えられてきました。それが大きく変わり始めたのは、この数年のことです。 松下幸之助が残した有名な言葉「事業は人なり」でも表現されているように、一部の一流経営者は人が重要であることを以前より深く理解されていました。しかしながら、バブル崩壊後の需要低迷期に費用対効果を意識した経営が重んじられてきた結果、短期的な効果が見えにくい人への投資の優先度が下がり、結果として日本企業は中長期の競争力が低下したように見えます。 そのような背景の中で、人材を費用ではなく資本ととらえ、投資家に対して人材に関するデータを公開する人的資本開示が2023年3月期決算から上場企業に義務付けられました。 また、本来的に持続的な競争優位は人によって作られるということも改めて認識されるようになりました。そのような背景もあって、今、人材育成と組織開発は、レイヤーがあがって経営アジェンダとして重要なものと位置づけられるようになっています。 ほとんどの企業の人的資本開示は、依然として形式的なものにとどまっているとも言われています。しかしこのままでは不十分です。有効求人倍率は上昇傾向にあり、あらゆる業界で人材不足の状況にあります。 若手世代を中心に、成長実感が得られる環境を求める傾向が強まっていて、優秀な人材を惹きつけるためには安定したホワイトな環境を与えるだけでは足りません。人的資本経営が重要なテーマとなった今、まずは人的資本経営という概念をしっかり理解しておく必要があります。 ではそれがどのようなものなのか、内容に入っていきたいと思います。