「コス」が京都の絞り染め職人とコラボ 衰退する工芸技術を広めるきっかけに
絞り染めは糸の巻きつけ具合や染める角度などによって模様の出方が毎回異なり、細部に職人の技が問われる。田端は「コス」からのオーダーに沿って「完璧すぎず、不ぞろいすぎない絶妙なバランスを目指した」と説明。グスタフソン=デザイン・ディレクターは、「田端氏が生み出す柄は力強さがあると同時に穏やかな印象を受けた。タイムレスなデザインに重きを置く『コス』のファッションと通ずるものがあった」とコメントした。
従来絞り染めは1点1点手作業で行うため製作できる点数は限られる。加えてプリントでは絞りのかすれやにじみの表現が難しいとされる。今回両者が協力してそうした細部の味をプリントで忠実に再現することで、絞りならではの風合いを担保しながら量産することが叶った。田端は「職人が見ても本物と区別がつかないほどの仕上がりになった」と出来を語る。
74歳で若手、後継者不足の産業を広めるきっかけに
京都芸術大学で開催したイベントでは、田端による絞り染めのデモンストレーションや、実際に参加者が布を糸で縛るワークショップなどを行った。後半は田端が工房で働く4人の学生インターンと共にそれぞれの柄に込めた思いや試行錯誤を繰り返した過程について語った。
また後継者不足の現状についても言及。技術の習得に時間がかかることや、着物の需要が縮小するなかで活かせる仕事が減っていることなどが原因だと言う。田端は「私が継いだ時点では74歳だった父が若手と呼ばれるような状況で、今44歳の私の、横にも下にも人材がいない」と課題を語る。「手仕事だけでは届けられる範囲が限られている。今回のコラボが世界中の人々に絞り染めを知ってもらえるいい機会になるはずだ」と意義を語った。
グスタフソン=デザイン・ディレクターは、「私たちは工芸やモノ作りのオリジナリティーを尊重する。まだ具体的な計画はないが、今後も日本の職人との協業の可能性は探っていきたい」と話した。