城見学ツアー時間かけて 見るべきポイント特別講義→現地で観察 歴史と武将自ら読み解く
現在、城を訪ねて歴史と武将を体感する人が増えている。江戸時代の城を調査していると城見学バスツアーに参加している方々によく出会う。しかし、どうも皆さん忙しそうである。行程をお伺いすると、一つの城を天守を含めて1時間で見て、次に移動するという。 全解体修理が進む熊本城宇土櫓と大・小天守
1時間の中で城内を移動・見学して、お土産を探し、トイレも行かなくてはならない。百名城・続百名城のスタンプも探して、押すことも忘れてはいけない。さらに集団行動となると1時間をフルに使うのではなく、集合時間よりちょっと前にバスに戻った方がよい気がしてくる。だから実質の見学時間は40分前後になってしまう。 どれだけ短い見学でもその城を訪ねたのには間違いない。そしてこのペースで城をたどれば、驚くほど効率的に多くの城を訪ねられる。 しかし考えてみてほしい。堀や石垣、櫓(やぐら)や門・天守を、ただ通り抜けるように眺めただけで、その城をわかったといえるだろうか。城の楽しみは、訪ねた数だけではなく、どれだけ深くその城に接し、歴史と武将を自分自身で読み解いたかにあるのではないか。
そんな疑問を持っていたところ、読売旅行と読売新聞社のご尽力で6月に、熊本城、水前寺成趣園、八代城を訪ね、千田がたっぷり時間をかけて最新の調査・研究成果を現地で解説する、夢のガイドツアーを実現してくださった。企画に賛同してくださって全国からご参加くださった皆様、行き届いた細やかな配慮で旅行計画を実現してくださった読売旅行に、心から感謝申し上げたい。
さて、このツアーでは、集合してすぐに現地に飛び出すのではなく、まずは熊本城の見所を徹底解説する千田の特別講義から実施した。熊本城は2016年の熊本地震で大きな被害を受け、現在、文化財修復の途上にある。この修復過程で判明した新事実はたくさんあって、どこに注目して、何を現地で体感しようとしているかを、しっかりお話しした。 見学は、備前堀と修復が完了した飯田丸五階櫓の石垣から始めた。備前堀は熊本城の主要見学路だった行幸坂脇の堀だが、熊本城調査研究センターの発掘調査によって、加藤清正が、どう白川の流路を変えたかが判明した。 さらに飯田丸五階櫓の石垣は、耐震強度を高める近代工法を取り入れて積み直しが完了したところであり、文化財修復の今を体感できるポイントである。どこを見るべきかを講義でお伝えしてあるので、参加してくださった皆様の観察はとても鋭い。