SNSで謝罪に変化が!? 日米仏の謝罪事情考察。
アメリカ流謝罪
アメリカでは痛悔の念を示すことが昔からおこなわれてきた。プロテスタント的な宗教イデオロギー、贖罪、赦し、そしてセカンド・チャンスに彩られたこの国で、痛悔は文化の一部であり、私生活もその対象となる。 ビル・クリントン元大統領がモニカ・ルインスキー事件で、妻と国民に嘘をついたことを謝罪したことは記憶に新しい。タイガー・ウッズは妻を裏切ったことを謝罪した。ジョージ・W・ブッシュ元大統領が涙を浮かべながら、青春の過ちを謝罪したこともある。 ハリウッド、そしてアメリカの政治やスポーツの世界で公の場での謝罪は、広報のエキスパートによって巧みに演出される。これらのエキスパートは"スピン・ドクター"と呼ばれ、怒っているコミュニティ社会をなだめるために適切な言葉を選ぶ術に長けている。 以前は文書による声明文で十分対応ができた。SNSの爆発的な普及により、いまや動画が最終兵器だ。#apologiesのハッシュタグがつく謝罪動画はTikTokで750万ビューに達している。なかには「心からの謝罪動画を作るため」のハウツーをウェブサイトで提案し、ビジネスとして成り立たせている人さえいる。 「本当に謝罪していると信じこませるためにあの手この手が使われているが、本当なんかじゃない」とビジネスリーダーニュース誌の「デシドゥール・マガジン」の編集長、リュカ・ジャキュボヴィックは切って捨てる。カメラの前で涙を流しての真摯な告白さえ、信用し難い。 ホンネを好むZ世代が台頭してきても、それで真摯な謝罪が増えたわけではなく、これまでの芝居がかった"真実を語る会見"に代わり、もっと生々しくて荒削りの演出がされるようになっただけなのだ。つまり、これまではオプラ・ウィンフリーのようなプロによる高視聴率番組で、たとえばサイクリストのランス・アームストロングがドーピングを反省する姿が映しだされた。いまやスターたちは、アメリカの人気テレビキャスターの前で懺悔するよりも、自らの情報網を通じて直接メッセージを伝えることを好む。 この壮大なコミュニケーション活動において、タイミングの問題は極めて重要だ。謝罪が遅れれば遅れるほど、人々に受け入れてもらうのは難しくなる。「SNSとオンライン・メディアは、危機コミュニケーションプロセスを加速させている」と指摘するのは危機管理のプロ、オピニオン・バレー社長のヴァンサン・プレヴォストだ。「素早い行動で火が消えるとは限らないが、さらに広がって制御不能になるのを防ぐことはできる」とも。 セレブたちは、嵐をうまく切り抜け、回避するために広報のプロに頼る。SNSを日々ウォッチングしていれば、こうしたプロたちは何か起きた場合、どのぐらいの反応が起きるかを見極め、数時間のうちに対応策を準備することができる。「我々は考える手助けをするが、代わりにしゃべることはしない」と専門家のMCBGコンセイユ・エージェンシーの会長、フィリップ・モロー・シュヴロレは役割を説明した。