高速料金“変動制” 渋滞緩和を狙い全国拡大へ 利用者のメリット、実証実験の効果は? 専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。5月9日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「高速道路の料金を時間帯などで変える“ロードプライシング”全国で実施へ」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆時間帯で利用料金が変わる「ロードプライシング」
政府は高速道路の渋滞対策として、料金を時間帯に応じて変動させる「ロードプライシング」を2025年度から順次、全国で導入する方針です。6月に取りまとめる「骨太の方針」で考え方を盛り込む方向で調整し、この夏以降、国土交通省が開く審議会で高速道路各社などと料金体系について協議を始めます。 ユージ:塚越さん、まずロードプライシングとは、どのようなものでしょうか? 塚越:ロードプライシングとは、特定の道路や地域・時間帯での自動車利用に課金することを指します。自動車利用の合理化や交通行動の転換を促し、交通量の抑制を図る施策です。アミューズメント施設や宿泊施設でも、状況に応じて値段を変える「ダイナミックプライシング」がありますよね? 簡単にいえば、あれの道路版だと思っていただければいいです。
◆東京湾アクアラインの実証実験では「効果あり」
吉田:ロードプライシングでどんな効果が期待できるのでしょうか? 塚越:まずピーク時間帯に交通量が減少して渋滞が緩和すること。それによって車のアイドリング時間も減って、脱炭素につながります。さらにバスなどの公共交通機関も時間通りの運行がしやすくなるので、交通需要が調整できれば物流の効率化や環境負荷の低減、観光需要の喚起なども期待されています。 ユージ:ロードプライシングといえば、2021年の東京オリンピック、パラリンピックの期間中に大会関係の車両がスムーズに移動できるようにと、首都高速道路で実施されて賛否がありましたね。現在日本でおこなわれている社会実験の状況はいかがでしょうか? 塚越:現在は千葉県木更津市と川崎市を結ぶ東京湾アクアラインで、2023年7月~2024年度末まで実験的におこなわれています。具体的には、通行料がETC搭載の普通車で800円のところ、土日祝日の川崎・東京方面に向かう上がり線で13時~20時は1,200円と高くして、逆に20時~24時は600円と値段を下げています。 実際の効果について、今年の頭に千葉県庁で中間報告会が開催されています。それによると、土曜は値段が上がる13~20時で交通量が3%減少。日曜は交通量が全体的に増えているのですが、値段が高くない夜の時間などへの利用の時間帯が分散している傾向があることが分かりました。アクアラインの通過にかかる「所要時間」に関しても、土曜はおよそ31%、日曜はおよそ21%減少しています。これは渋滞が緩和されたからだとみられています。 ユージ:ロードプライシングの効果が出ているようですね。 塚越:そうですね。さらに別の効果も出ています。アクアライン経由で千葉県を訪れた観光客の平均滞在時間が、導入前に比べて2割増えました。これは渋滞が緩和したことで観光の時間が増えたということです。1つの施設ではなく、別の観光施設に立ち寄る割合も増加し、帰宅時にアクアラインを利用するピーク時間が分散化したという効果もあったということです。交通だけでなく、観光業をはじめとした地域活性化にもつながり、当然、利用者にとってもメリットが出ていると言えます。