2024年金商法改正の成立
任意的登録制度の意義
もっとも、改正法は、投資運用関係業務受託業者について、「内閣総理大臣の登録を受けることができる」(金商法66条の71)と定めており、あくまで任意的な登録制度が採用されている。言い換えれば、内閣総理大臣の登録を受けて金融庁の監督に服するといったことのないまま、投資運用関係業務を投資運用業者から受託すること自体は、違法ではないのである。 実際、現在でも、投資信託や投資ファンドの運用にあたって、ミドル・バックオフィス業務の一部を外部委託することが行われているし、そうした業務を受託する事業者も存在するが、すべての事業者が新たに登録を受けることを要求されるわけではない。 ただし、前述の投資運用業への参入規制の緩和措置が適用されるのは、内閣総理大臣の登録を受けた投資運用関係業務受託業者にミドル・バックオフィス業務を委託する場合に限られる。このことを投資運用関係業務を受託しようとする事業者の側から見れば、ミドル・バックオフィス業務の知識・経験を有する役員・使用人を確保しないまま、日本で投資運用業を営もうとする新規参入企業を顧客として獲得しようとするのであれば、金商法の規定を遵守しながら金融庁による監督に服することを前提に、内閣総理大臣の登録を受けなければならないということになる。
運用権限全部の外部委託の解禁
今回の法改正では、投資運用業者はすべての運用財産についての運用権限を全部外部に委託してはならないとする従来の規定が改正され、運用の対象や方針を示し、運用状況の管理を適正に行えば運用権限を全部委託することが可能となった(金商法42条の3)。併せて、投資信託の運用について運用指図権限の全部を外部委託することを禁じる規定(投資信託及び投資法人に関する法律12条1項)も削除されることになった。運用権限の「丸投げ」ともいえる業務形態が可能となるのである。 従来、投資運用業者が、例えば外国株に投資するファンドの運用を海外の専門業者に委託するといった外部委託は認められていたが、投資運用業者の最も本質的な機能と考えられる運用権限の全部を外部委託する行為は、金融商品取引業者の禁止行為の一つである「名板貸し」に近いものとも捉えられ、許容されていなかった。 しかし、ファンドの企画や立案といった運営機能に特化し、外部の様々な運用業者を活用して、いわばファンド・オブ・ファンズの運用に特化するというビジネス・モデルを禁じなければならない強い理由はないだろう。今回の法改正で、そうしたビジネス・モデルの採用が可能となる。