「普通の生活に戻れたら」枕に顔をうずめた…露侵略あす1000日、ウクライナ戦禍の子たち14人の体験記
ロシアによるウクライナへの侵略から1000日となる19日、ウクライナの子どもたち14人が戦禍の体験をつづったブックレット「戦時下の子どもたち ロシアによるウクライナ全面侵攻 1000日」が出版される。企画した日本ウクライナ文化交流協会(大阪府八尾市)の会長、小野元裕さん(54)は「平和な世界に生きたいという切実な思いに心を寄せてほしい」と話す。(福永正樹)
「勉強意味がない」
小野さんは大学でウクライナの歴史を学んだのを機に文化交流に取り組み、ロシアが侵略を始めた2022年2月24日以降、ウクライナに避難所を開設したり、避難民にカイロを届けたりと支援活動を続けてきた。ウクライナ政府によると、侵略開始後、580人を超す子どもが死亡し、1600人以上が負傷した。
小野さんは今年9月、首都キーウ近郊に住む同協会のアドバイザー、アンドリー・ブチネフさん(50)から、長女のヴェダナさん(14)が「明日爆撃を受けて死ぬかもしれない。勉強しても意味がない」とこぼしたと聞き、胸が痛んだ。
アンドリーさんは、小野さんから「ウクライナの子どもたちが直面している厳しい現実を伝えたい」と依頼を受け、10月上旬に子どもたちの手記集めを始めた。ウクライナでは大勢が避難民として国内外に逃れ、戦時下の経験を書きたがらない子どもも多く、作業は難航した。
だが、ウクライナ国内にいる協会関係者や知人を通じて地道に協力を呼びかけ、幼い子には母親に聞き取ってもらって5~14歳の14人分の手記を集めた。出版に際しては、日本の大学に留学経験があるアンドリーさんが日本語に翻訳し、原文と併記した。
父の隣に負傷兵
手記によると、キーウ市に住む7歳のスヴェトスラフ君は、父親が侵略開始直後に出征した。きちんと別れを告げる時間もなかった。しばらくして母親から父親が負傷したと聞き、見舞いに行くと、父親は顔色が悪く疲れきった様子だった。隣には腕や足がない負傷兵が横たわっていた。「怖かったが、恐怖を表に出さないようにした」という。