鳥山明、24年前の名作「SAND LAND」 なぜ今、ゲーム・アニメ化?
鳥山メカのわくわく感をゲームに
――んー、進行中の作品もたくさんあるのに、何でSAND LAND……。 南 あと1つ挙げると、“鳥山メカ”をゲーム化したいというのがありました。 ――あ! それは分かります。SAND LANDはメカが活躍しますよね。 南 そうなんですよ。鳥山メカが好きな人は世界中にいると思っています。ゲームをプレーしていただくと分かると思うんですが、ドラゴンボールに登場するようなメカも出てきますし、鳥山先生のアートワーク集を参考にしたメカも出てきます。 ――ゲームは試遊させていただきました。元々のSAND LANDに出てくるのは、戦車やジープ(型のクルマ)くらいですが、ゲームには(ドラゴンボールの)ブルマが乗っていたようなバイクやホバーカーも出てきました。 南 僕としては、少年のときに子供心をくすぐられた、あの緻密なデザインで書き込まれた鳥山メカを自分で操作してみたい――そこでSAND LANDを使わせていただいたというのはありますね。 ――それなら腑(ふ)に落ちます。原作にはなかったメカも、鳥山先生の他作品やアート集を参考に“作った”ということですね。 南 そうです。ゲームには全部で10種類以上のメカが登場します。 SAND LANDは「幻の泉を見つける」という冒険ですから、やはりマップは広くしたい。その移動手段として鳥山メカが活躍します。 ――アニメはストーリーが決まっていますが、ゲームなら自分で自由に動きたい。オープンワールドが増えている今のゲームのトレンドにもSAND LANDは合っているかもしれません。 南 SAND LANDはオープンワールドとはうたっていませんが、それでもかなり広いフィールドです。その点も含めて、SAND LANDが連載されていたころにゲーム化しようとしても、おそらくできなかったと思うんです。ハードやグラフィックの問題がありますから。 今なら、SAND LANDの世界を適切に、多くの方に好きになってもらえるような作りで再現できるんじゃないかというのも後押しになりましたね。 ●アニメと同時進行、ゲームとの違い ――ゲーム化されると聞いたとき、最初に思ったのは「ボリュームが足りないのでは」ということだったんですよね。1巻分の原作は、映画にはちょうどいい。でもゲームとなると、クエストを足してもすぐに終わってしまいそうだなと。 南 めちゃくちゃ詳しい。(笑) ――ごちゃごちゃ考えながら見てたんですよ(笑)。実際のアニメやゲームでは、新作の天使の勇者編と、その舞台となるフォレストランドが追加されていて、なるほどと思いました。ゲームの企画が立ち上がった時点で、新作パートを作ることは決まっていたんですよね。 南 そうですね。ゲームとアニメのチームで情報を共有し合いながら、設定やメカデザインを詰めていきました。 冒頭でも話しましたが、やはりゲームとアニメではお客さんに伝わる魅力が違うと思っているんです。 例えばゲームなら、自分がキャラクターをコントロールして、インタラクティブにストーリーが進み、その世界に入り込む。今回は、鳥山メカでSAND LANDの広大なフィールドを冒険できることもベネフィットとして届けたいと思っています。 一方で、アニメでしか伝わらない、伝えきれないところもあるんです。例えば、アニメの序盤にベルゼブブがシーフをお供に連れて行くことになる話があります。そこには原作でもゲームでも描かれていなかったシーフ以外の魔物とのやり取りが描かれています。 戦車戦なんかも、映画やアニメでは漫画とゲームとは違う描き方がされている。アニメは原作に描かれていない余白部分をふくらませて、お客さんに提供できるんですよ。媒体ごとの強みを(アニメ版の)横嶋俊久監督や版権元と話し合いながらつくりました。 ――アニメ版の戦車戦は見応えありますね。 南 めちゃめちゃいいですよね。 ――あの形の戦車だからこその動き、地形や機能の差を生かした駆け引きなど、戦車戦の見どころがぎゅっと詰まっていました。でも、あれは見るから楽しいのであって、自分で操作するゲームではできない……。 南 そうなんですよ! ゲームでは常にリアルタイムで進行するし、ユーザー自身にバトルしてもらわないといけないので、相手キャラクターの表情なども伝えきれないところがあるんです。 ――一方で、完結しているアニメとゲームの同時進行は難しいのではと思う面もあるんです。アニメを見るとゲームのエンディングも見えてしまいますから。 南 そうですね。企画の当初からゲームの“幅”というのはすごく考えていました。ストーリーは鳥山先生総監修の下、天使の勇者編まですべて作っていました。それをアニメとゲームとでどう違う遊び方にするか、伝え方にするかを開発チームと共に考えながら進めましたね。 具体的に言うと、今回、ゲーム内マップは非常に広大です。ただ、マップが広いだけでは今のお客さんはどうしても飽きてしまう。そこで、メインストーリーは軸としてありつつ、サブクエストやミニゲームを用意したり、鳥山メカをカスタマイズできるようにしたりして、自分なりの進め方で楽しんでもらえるようにしています。