「24時間戦えますか?」のリゲインが主力商品の出荷を終了、ひっそり1種類のみに。衰退の一途の栄養ドリンク市場の一方、拡大するエナジードリンク市場。社畜に愛されるエナドリとの”決定的な差”とは?
「『アガる』とか『イケてる』とか、なんだかバカな分析だな」と思うことなかれ。エナドリが上陸するまでの日本で、「疲労回復」するには栄養ドリンクしかなかった。 ■「モーレツ」とは別の、「クール」なイメージ その一方で、リゲインの「24時間働けますか?」がわかりやすい例だが、栄養ドリンクは「サラリーマン向け」、もっといえば「おじさん向け」の商品だった。 そのなかでエナドリは「クラブで飲むとアガるイケてる飲み物」に「疲労回復」を添加させて、それまで日本人が栄養ドリンクに抱いていた「モーレツ」とは別の、「クール」なイメージをエナドリに抱かせたのである。
これが若者に大当たりした結果、「魔剤」というネットミームが生まれるほど、疲労回復のための飲み物としてのイメージが定着した(ただ、メーカーも予測していなかった小中高生までもが常飲するという問題も発生したりしたのだが)。 そして、売れれば、当然陳列される数量も増える。次第にコンビニの清涼飲料コーナーの一角をレッドブルとモンスターエナジーが占めるようになり、そうするとこれまで栄養ドリンクにしか目がいかなかった者も、大量に陳列されているエナドリが気になるようになる。
成分の「効き方」は人によって違うが、飲み比べて「どっちがいいか」を選ばせると、エナドリに軍配が上がるのは必然である。というのも、栄養ドリンクは医薬品や医薬部外品のため、薬のような味がして、「おいしい」とはいえない。それが、エナドリは大枠だとジュースのため、甘くて炭酸もハジけて飲みやすい。 こうして、これまで疲労回復のために栄養ドリンクを飲んでいた者たちが、おいしいエナドリに流れるのは容易に想像できるだろう。
この若者向けマーケティングによって、エナドリは、栄養ドリンクの市場規模を縮小させたのだった。 後続のZONeはeスポーツ、VTuber、スマートフォンゲーム『ウマ娘』とコラボし、リアルゴールド XYは「YOSHIKIプロデュース」を前面に打ち出している。レッドブルやモンスターエナジー同様、若者に向けて商品をアピールしているのだ。 YOSHIKIが若者向けかといわれてしまえば、そこに疑問符はつくが、それでもアリナミンVはスーツを着こなした反町隆史、ユンケル黄帝液はとうとう50歳になったイチロー、久光製薬の「エスカップ」は出社前の向井理をCMに登場させているように、栄養ドリンクはエナドリに対抗して、「サラリーマン向け」と完全にすみ分けがされた状態になっている。