「悪口を書いてくるやつは下に見てる」 本音を隠さない“クズ芸人”ナダルの生き方
「自分の本性を隠してやっていけたらいいんでしょうけど、そんな生ぬるい世界じゃないんでね。次から次へとすごい人が出てくるし、中途半端なことしてたらすぐ消えますから。第一線でやるためには手を抜かないっていうのは思ってますね」 テレビで見せるクズな言動の裏には、意外と高いプロ意識があった。彼は生来のモンスターであると同時に、大衆が求めるモンスター像を演じるプロフェッショナルなのかもしれない。 「わかってくれる人はわかってくれるんです。M-1王者の(マヂカルラブリーの)野田クリスタルさんも『ナダルはナダル大喜利が強すぎるんだよね』って言ってましたから。振られたことに対する間違いを犯さない。どんだけ緻密に計算されたお笑いをやっているか、っていうことなんですよ」 冗談とも本音ともつかない口調でそう語る彼は、天然と計算を奇跡的なバランスで両立させる“プロのクズ芸人”と言ってもいい。
「クズ」を売りにするつもりはなかった
ナダルが従来のお笑いのセオリーにない突飛な行動に走るのは、幼少期からお笑い文化に触れずに育ってきたからかもしれない。親からは「お笑いを見たらアホになる」と言われ、バラエティー番組を一切見せてもらえなかった。 「『クレヨンしんちゃん』すらあかんかったですからね。友達がテレビの話をしていてもついていけなくて、『そんなことより、今日めっちゃ晴れてるけど、何して遊ぶ?』とか言ってました」 大学卒業後は漬物屋に就職。その仕事をずっと続けていけるのか悩んでいたところ、友人から「一回、芸人やってみてほしいけどな」と言われた。それをきっかけに吉本興業のお笑い養成所「NSC」に入学する。 「いま考えたら、大学のときにも友達からめっちゃイジられてたんです。それに対して『何じゃ、コラ!』って本気でブチ切れてたんです。それがおもろかったのかもしれない。だから、今の芸風と全く一緒なんです」
“お笑い音痴”のナダルがNSCに入ると、そこは別世界だった。幼い頃からお笑いを見て育ってきたほかの受講生たちについていけなかった。 「僕は劣等生でした。面白い順にA、B、Cとクラス分けがあったんですけど、僕はCの中の一番下のC4っていうところになりました。最初はみんなより年上だから仕切ってましたけど、クラス分けされてからは肩身が狭かったです」 NSC卒業後、今の相方である西野創人に声をかけられてコロコロチキチキペッパーズを結成した。それまで組んでいたコンビでは一度もウケたことがなかったが、西野と組んでからは笑いが取れるようになった。 芸歴4年目の2015年には『キングオブコント』で優勝。テレビに出る機会も増えていく。その頃はまだ、「クズ」を売りにするつもりはなかった。 「かわいげがある芸人が売れるっていう定説があったので、西野からは『かわいらしくいてくれ』ってめっちゃ言われましたね。でも、やっぱり無理で。偽りなく本気の自分をダダ漏れにしていって、今に至るっていう感じです」