鮮やかにきらめく「宇宙の綿菓子」NASAのハッブル宇宙望遠鏡が撮影
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影したこの画像を見ると、地域のお祭りで売っている屋台の綿菓子が食べたくなるかもしれない。この優美な画像に写っているのは、地球から南天の星座かじき座の方向約16万光年の距離にある、N11星雲だ。NASAは声明の中で、N11を「星々によって泡立つ領域」と描写している。この画像は、天の川銀河(銀河系)に隣接する銀河とそこで作用している宇宙のプロセスを、天文ファンに垣間見せてくれる。 【画像】N11星雲が大マゼラン雲内のどこに位置するかを示したもの HSTが捉えたN11の画像は、輝きが散りばめられた渦巻く赤い霧のように見える。「約1000光年にわたって無秩序に広がったN11のフィラメント群が、恒星物質を互いに織り交ぜている様子は、まるでキラキラと輝く綿菓子のようだ」とNASAは表現している。「綿で織りなしたようなこのガス雲が、急成長している多数の若い大質量星によって電離されていることにより、星雲全体が鮮やかな赤紫色に見えている」とNASAは続けている。1000光年という距離がどのくらいかを実感するのは難しいが、太陽に次いで地球に最も近い恒星のプロキシマ・ケンタウリまでの距離が約4.2光年であることは、知っておくと役に立つ。要するに、N11は巨大なのだ。 N11は、一群の発光星雲で構成されている。発光星雲は、光を発しているガスと塵(固体微粒子)の雲でできている。N11は、大マゼラン雲(LMC)の中に位置している。 LMCは、太陽系が属する天の川銀河(銀河系)に隣接する矮小銀河だ。伴銀河(衛星銀河)とも呼ばれ、銀河系の周りを回っている。比較的小型の銀河だが、内部では星形成が活発に行われている。科学者は、N11内にある恒星の種類と分布に関する理解を深めるために、HSTを利用している。
運用34年超の古参宇宙望遠鏡もまだ現役
N11は、星の「ゆりかご」であると同時に「墓場」でもある。N11の赤い雲の領域を、暗黒の泡構造が引き立てている。「これらの泡は、星雲内における活発な恒星の誕生と死の結果として形成されたものだ」とNASAは説明している。「恒星風と超新星が周辺の領域を侵食し、ガスと塵の球殻を形成したのだ」という。星雲は、外観が美しいだけでなく、星がどのように生まれ、生き、そして死んでいくかを教えてくれるものでもある。太陽は約46億年前に星雲の中で形成された。遠方の星を観測することで、太陽のライフサイクルに関する洞察を得ることができる。 HSTは、NASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同プロジェクトだ。優先度が最上位のフラッグシップミッションに位置付けられたHSTの打ち上げは1990年に遡る。運用期間が34年に及び、宇宙望遠鏡としては古参となる。この数十年の間に幾多の試練を経験し、今年もこれまでに難しい技術的問題をいくつか乗り切っている。HSTチームは、望遠鏡を稼働させ続けるために新しい運用モードを導入した。この修正措置が功を奏したため、科学ミッションは継続されている。 NASAとESAは、遠方の銀河や絶景の星雲、さらには木星や天王星などの太陽系の惑星にも光を当てるHSTの画像を定期的に公開している。科学と一般向け天文普及活動へのHSTの貢献は計り知れない。HSTは、わし星雲の中にある「創造の柱」の画像など、現代の最も象徴的な宇宙画像のいくつかを地球に送り届けてきた。今回は、綿菓子のように見えるN11星雲が、HSTの天体画像リストに新たに追加された。
Amanda Kooser