地元で出産できない…減少する産婦人科 増加する「遠距離出産」求められる自治体のサポート【大分発】
いま、産婦人科の中で「分娩が出来る医療機関」が全国的に減っている。そのため、妊婦さんが出産する際、住んでいる場所から遠く離れた医療機関で行う「遠距離出産」を余儀なくされるという課題があるという。大分県内の現状を取材した。 【画像】地元で出産できない…減少する産婦人科 増加する「遠距離出産」求められる自治体のサポート【大分発】
もしあなたの地元で、赤ちゃんが産めなくなってしまったら…
大分県大分市の中心部、街の人に聞いたところ… 「(地元で産めないのは)考えられない」(子供が3人いる30代女性) 「全然信じられない…」(3人子育て経験をもつ70代女性) 「もし3人目とかなると…将来の設計をもうちょっと考え直さないといけないかなって思います」(子供が2人いる30代女性) といった声が聞かれた。 近年、全国的な課題になっている「分娩が出来る医療機関」の減少。 上記のグラフは全国にある診療所の数を示したグラフである。 2006年には1800か所近くあったものの、去年には4割減り1090か所に。 一方、大分県内でも分娩可能な医療機関の数は、2014年には35か所あったが、この10年間で25か所に減っている。
背景には少子化だけでなく、出産を担う医師を取り巻く事情が…
「産婦人科医が高齢化していることは理由の1つ。分娩というのは昼も夜も起こりえるため体力的に…という問題が出てくる。なかなか夜の勤務はきついと」 こう話すのは大分県産婦人科医会の佐藤昌司会長。 大分県内18市町村の状況を調べてみると、 豊後高田市や津久見市など8つの市町村には、分娩が出来る医療機関がない。(2024年4月18日時点) 竹田市もそんな課題を抱える自治体の1つ。 市内に住む、2024年6月に出産を予定している女性は、検診の際には約1時間かけて大分市内の産婦人科まで通っている。 女性は「出産するのは命を授かっているので、何かあったときにすぐ対応できる施設が無いのはやっぱり不安」と話す。
不安解消に「交通費や宿泊費の助成」導入
住む場所によっては、妊婦さんが「遠距離出産」となる大分県内の現状…そんな中、行政では不安解消のためのサポートを行っている。 竹田市で昨年度から始まったのが検診や出産時の「交通費や宿泊費の助成」である。 例えば検診の際の交通費について、タクシー以外の場合は往復1000円、タクシーを利用する場合は1万2000円を上限に助成。 また、出産の際に、医療機関の近くの宿泊施設を利用した場合は1泊あたり最大5000円を助成している。 実際にこの制度を利用したという竹田市内に住む野尻夏鈴さん。 ことし2月に2人目の子供を出産。 出産までの間に利用した産婦人科は、車で約40分かかる豊後大野市と、約1時間かかる臼杵市だった。 あわせて16回通院して、竹田市から1万6000円の助成を受けたという。 野尻夏鈴さんは「助成金があることで竹田市が“頑張れ!”って言ってくれるような感じがするのでこういうのがほかの人にも広がるといい」と感謝の言葉を口にした。 大分県産婦人科医会の佐藤会長は 「必ずしも毎回、遠くの分娩可能な医療機関に行く必要はなく普段の検診に関しては、近くの診療所などで解決できる場合もある。まずは、分娩を予定している施設と、出産までの対応を話し合っておくことが重要」と話す。 大分県内では、昨年度から今回紹介した竹田市を含む、6つの自治体が検診や出産のときにかかる「交通費や宿泊費の助成」を始めている。 安心して赤ちゃんを産みたいと思う妊婦さんの思いに対し、これからも継続的な支援が求められる。 (テレビ大分)
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