「頑張っているけど、もう…」 自立訓練に追い込まれ、知的障害の息子が起こした”反乱” 「本人のためと・・・」親に思い違いと気づかせたひと言
養護学校に通う陽気な15歳「前はイライラしていた」
3月上旬の昼、長野県県稲荷山養護学校(千曲市)中学部3年の教室。生徒5人が黙々と給食を食べていた。「オーレー、オーレー、マツケンサンバ」。大井陽介さん(15)=長野市、現・高等部1年=は両腕でリズムを取り、急に歌い出した。担任の西川ひろみさん(45)がクスリと笑った。 【ひと目で分かる】年代別でみると思春期になるにつれて重症化する傾向にある
陽介さんは自閉スペクトラム症と知的障害がある。以前、授業で踊ったのがきっかけで陽気なメロディーの「マツケンサンバ2」は陽介さんのお気に入りだ。お笑い芸人のコントや演芸番組「笑点」も好きで、家で宿題が終わった後に「ザ・ドリフターズ」の動画を見る。陽気な性格だ。 だが、陽介さんは「(中学部)2年生の時まではイライラしてたよ」と振り返る。
おとなしかった子どもが物を壊すように・・・
陽介さんは10歳ぐらいまで、おとなしく大人に言われたことをきちんとこなす子どもだった。地元の小学校に入学し、特別支援学級に通った。5年生の頃、学校の学習で飯縄山に登り、宿泊した。だが、無理がたたったのか、1カ月後に理科室の窓ガラスを割った。その後、タブレット端末などを度々壊すように。朝、校門まで来ても近くの木にしがみつき校内に入らなくなった。 環境を変えるため陽介さんは稲荷山養護学校に転校。登校できるようになったが、破壊行動は続いた。家ではテレビを1回、戸を2回壊した。中学部になると、母の光世さん(46)よりも体が大きくなった。強度行動障害の行動が出ていた陽介さんを止めに入っても、光世さんは物を投げ始めると手を出せない。「毎日ビクビクしていた」と光世さんは振り返る。 強度行動障害は医学的な診断名ではなく、生まれつきの障害の特性と周りの環境とがうまく合わないことなどが原因で起きる二次障害だ。自傷や人をたたく他害、窓ガラスを割るといった物を壊す行動が現れる状態を指す。 陽介さんは自宅や校舎から陽介さんが走って飛び出していくこともあり、家では光世さんが常に目を離さなかった。陽介さんはいつも眉間にしわを寄せ、にらみつけるような目をしていた。