AI、短期的にインフレ押し上げ要因に=カナダ中銀総裁
[オタワ 20日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)のマックレム総裁は20日、企業による相次ぐ人工知能(AI)の導入に伴い、短期的には需要拡大をもたらし、インフレ圧力を高める可能性があるとの考えを示した。AI技術への旺盛な投資の動きが見られるほか、データセンターの建設が相次いでいることで電力需要が急増していると指摘した。 マックレム氏はトロントで開催されたAI関連のイベントで、AIが生産性を高めることで供給力を増やすとしながらも「短期的には需要を押し上げる。そうなれば、AIの導入は短期的にはインフレ圧力を高める可能性がある」と述べた。 AI技術を巡っては、各国の中銀がインフレを安定的に低く維持するため、物価と雇用の動きをより正確に予測することに役立てるための方法を検討している。マックレム氏は、中銀はAIが労働者や消費者、経済、物価にどう影響するかについて理解を深める必要があると指摘。世界経済が不確実性を増していることもあり、AIの影響によって、新型コロナウイルス禍前の25年間よりも物価動向が不安定になる可能性があるとも言及した。 世界の中銀が加盟する国際決済銀行(BIS)は6月、中銀がAIの強みを活用すべきだとする一方、金利設定に関してはAIが人間に取って代わるべきでないとする報告書を公表している。 マックレム氏は、AI導入に伴う仕事の置き換えが目立った雇用減につながっている証拠はないとした上で、そうした広範囲にわたる影響については予測が難しいとして、注意を促した。 カナダ銀行では、すでにインフレ予測や経済心理の動向、データの検証、効率性の向上にAIを使用している。ただ、導入は初期段階といい、マックレム氏は「慎重に手探りで進む」と、より詳しい情報を収集していく意向を示した。 マックレム氏によると、カナダは企業が責任を持って生成AIの開発と管理を確保するための自主行動規範を昨年まとめたという。