補選全敗:岸田首相を待つ3つのシナリオ
<シナリオ3:野垂れ死に退場>
最後にあり得るのは、岸田首相が人事権行使にも解散権行使にも失敗した末、通常国会の閉会後もだらだらと政権を担当し、9月の総裁任期切れとともに退場するシナリオ3だ。政権は完全にレームダック化して最後は野垂れ死にの形になる。この場合、終盤国会の焦点になっている政治資金規正法の改正はかなり中途半端な内容にとどまるはずだ。 裏金還流の舞台となった派閥は、政治資金規正法の「その他の政治団体」に分類され、企業・団体献金を受け取ることが禁じられている。 ところが、派閥側は政治資金パーティーが講演や飲食など「対価のある催し」として献金とは別扱いになっていることを逆手に取り、企業や団体に大量のパー券を購入させていた。しかもパーティー経費を極力抑えて「利益率」を9割近くに高めているから、実態は直接の政治献金と変わりがない。パーティーは本来は派閥に入らない企業献金を飲み込む「脱法装置」だ。さらに派閥を経由して議員側に還流した裏金は、法律の制約を受けない自由なカネに「洗浄」されている。 つまり一連の裏金事件は、派閥ぐるみの脱法的な資金獲得と、法律の適用外への資金逃避という二重の意味で悪質だった。 今回の改正ではこうした「抜け道」を徹底して防ぐ必要があるのに、自民党が補選前に慌ててまとめた改正案は要件を満たしていない。昨年暮れ、「火の玉になって改革に取り組む」と宣言した岸田首相だが、国会では野党から「もう燃え尽きちゃったのかしら」と皮肉られる有り様だ。いずれのシナリオも政治に希望を見いだすには難がある。
【Profile】
古賀 攻 公益財団法人ニッポンドットコム顧問。1958年佐賀県生まれ。明治大学政経学部卒業後、83年に毎日新聞入社。政治部長、編集編成局次長、論説委員長を歴任。2024年より現職。