7年経っても癒えない傷…「あのとき死んでたら楽だったのかな」『いじめの後遺症』に悩む当事者 なぜ認知が低い?
7年経って、たけしさんは「小学校5年生の症状から何も改善していない」と明かす。「水便が出たり、毎日学校に行けない。倦怠感があり、授業中にめまいもする。たまに、幻聴や耳鳴りがある。一番嫌なのが、うつ状態に入ってしまうことだ。あのとき死んでたら楽だったのかなと考えてしまう。制御できないので、精神安定剤などの薬を飲んでいるが、ここ最近だと意味がない」。
■損害賠償を求め裁判を起こすも訴えは認められず
7年前に受けた、いじめで適応障害が発症したたけしさんは、市や同級生相手に損害賠償を求め裁判を起こすも、一審、二審ともに「精神的苦痛は相当程度大きなものであったが、適応障害との因果関係は認められない」との判決になった。 まりこさんは「お正月、おせちを食べていたときに(たけしさんが)味がしないと突然言い出して、もう駄目だなと。それで学校を転校して、いじめから1年後の2019年に裁判をした。4年後の2023年10月に一審の判決があったが、裁判では認めてもらえず。判決にすごく疑問を抱いて、控訴したが、病気との因果関係は認められなかった」と振り返る。 加害者家族はSNSで充実した毎日を投稿し、いじめの主犯格はスポーツで活躍し新聞に掲載される。一方で、たけしさんとまりこさんは、裁判を起こしたことで、周囲の目や誹謗中傷があるという。まりこさんは「主犯格は、県民の誇りと言われている子だ。その子は自分でインタビューには出るが、やったことに対して法廷では一度も出ない。親も出ないし、子どもも当然出ない」と憤りを感じている。 直接謝罪もなかったのか。たけしさんは「一切なかった。“ごめんね”って言葉だけでも救われるのに、謝罪の言葉すらもなかった。いじめの後遺症で苦しんでいる人たちのためにも、裁判をやってきたが、加害者寄りの判決になってしまった。救いの手を振りほどかれたような判決だったので、納得できなかった」と答えた。
いじめ後遺症の第一人者で、つくばダイアローグハウス院長、精神科医・批評家の斎藤環氏は「ありふれた判決だと思う」といい、「いじめ後遺症の事実はほとんど知られていない。時間が経ちすぎている、因果関係がないという判決になるのは予想の範囲内で、いじめ後遺症という現実が全然知られていないことの証左でしかない」との見方を示した。