自治会って抜けてもいいの?高齢化などで担い手不足… 家庭ごみの集積所めぐりトラブルも
回覧板で地域のお知らせや行政の広報を回したり、家庭ごみの集積所を管理したり、近所同士の支え合いの基盤となっている自治会・町内会組織。日本全国で伝統的に根付いてきましたが、少子高齢化や生活様式の多様化で担い手が不足し、加入率も下落傾向です。未加入者の増加に伴って、ごみ集積所の利用ルールをめぐるトラブルが頻発していて、住民同士の裁判に発展したケースも出ています。自治会を抜けたい人が増えている現状について、あなたはどう思いますか?
「会費払わないのは不平等」 解決の具体策見いだせぬ現状
「自治会を抜けたらごみ集積所を使えなくなる、という説明の仕方は誤りなのか」。今年2月、自治会役員などで構成する浜松市中央区協議会の西地域分科会で、自治会未加入者の集積所利用が議論になり、役員から不安が噴出しました。きっかけは神戸市で起きた民事訴訟の判決です。 2020年、自治会を脱会した神戸市の夫妻が、集積所の利用を拒否されて家庭ごみを出せなくなったとして、地元自治会の役員に損害賠償を求めて提訴しました。これまでに一、二審とも自治会側の対応を違法とみなし、慰謝料の支払いを命じています。 自治会側は「会費を払わないのに利用を認めれば不平等が生じる」と主張しました。しかし、判決はごみ出しを誰もが保障されるべき「法的保護に値する利益」だとした上で、自治会が代替案を示さず一方的に集積所の利用を限定した対応は、本来任意であるべき自治会入会の強制に等しい―と判断しました。 これらの判決は全国の自治会関係者の間で波紋を呼びました。会員確保のため「会員以外はごみ集積所が使えない」と説明してきた自治会が少なくないからです。どのような対応が「違法な入会強制」とみなされてしまうのか、関心を集めています。
集積所は自治会などの利用者が市町村に申請して設置し、維持管理の経費や労力を負担しています。浜松市では自治会加入率が94%と全国的にも高く、未加入者の扱いが問題になりにくかったものの、この数年でトラブルが増えてきたとみられます。自治会費とは別に、未加入者向けの集積所利用費を設定する動きもありますが、個別に徴収する労力や滞納者に対応するノウハウをどう確保するかなど、ただでさえ担い手不足の自治会にとって高いハードルがあるようです。 分科会の議論では、未加入者を一方的に排除せず、話し合う努力が重要だとの意見でおおむね一致したものの、解決策の具体像を見いだすには至りませんでした。市内の役員の1人は「会費や労力を負担しない“フリーライダー”が増えていけば入会の意味がなくなる。会員からみれば、なぜ未加入者のための仕組みまで考えなければならないのか、という思いだ」と嘆息しました。 一方、自治会費が重荷で離脱したいと考えている市内の80代の女性は「役員に相談しても『ごみを出せなくなる』と言われて、抜け方が分からない。役員を含めて強制加入だと思っている人は多いのでは」と話します。高齢者に取材していくと、「役が回ってきても受けられず断るのも苦痛」「抜けたら周囲の人にどう思われるか」など不安の声が聞かれ、近所同士では言いにくい悩みを抱えている人が多いと実感します。