『若草物語』“想い”が込められた畑芽衣の圧巻の長台詞 涼と律の“進まない”関係も
誰かを想う幸せと、かき乱される感情が混ざり合う時間は、時に甘く、時に苦い。だからこそ、ドラマに映画、小説……あらゆる物語は繰り返し恋愛を描き続けるのだろう。しかし、涼(堀田真由)は言う。友情だって『走れメロス』のような、魂を揺さぶるカタルシスを伴うのだと。そんな日曜ドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(日本テレビ系)第5話では、ついに“あの人”の恋が動き出した。 【写真】制服姿の長濱ねる プロットライターとして初めての原稿料をもらった涼は、心弾む気持ちを抑えきれず、律(一ノ瀬颯)にご飯をおごる。しかし帰り道、思いがけなく目にしたのは、芽(畑芽育)の同級生・沼田(深田竜生)の怪しげなバイト現場だった。いつも無愛想な沼田が、洗練されたセレブ風の年上女性からそっと手渡されたお金を受け取り、柔らかな笑顔でハグを交わす姿。見慣れない光景に胸騒ぎを覚えた涼は、急ぎ足で家に戻り、芽に一部始終を報告した。 沼田の纏う様々なブランドものは、“ママ活”で手に入れたものだった。クラスメイトたちは沼田のことを、からかうような視線と言葉で面白おかしく噂し合う。しかし、彼の家庭事情を知る芽は、周囲の目など気にする様子もなく、凛とした表情で言い返した。その姿は、人の目を気にしすぎる恵(仁村紗和)と、逆に気にしなさすぎる涼の、それぞれの良さを兼ね備えているようにも思う。 徐々に沼田の弟・真琴(永瀬矢紘)とも心を通わせていく芽。自宅での作業の合間に、3人で寄り添うように食卓を囲むようになる。しかし、沼田が完全に自分のことを意識していないと気づいた芽の心は何だかモヤモヤ。好きな人との距離が近いようで遠く、遠いようで近い。そんな不確かな感覚に、芽の胸は密やかに痛んでいた。 恋愛のぐちゃぐちゃした部分に悩む芽が、不安そうな声で紡ぐ“恋愛の機微について”の長台詞は圧巻だった。畑芽衣が一つ一つの動きに込めた想いが、まさに今、芽は恋をしているのだと思わせてくれたのではないだろうか。 一方、そんなふうに思いに蓋をしている人がもう一人。涼に想いを寄せる律だ。 かつての凛々しい姿から少し痩せ細ったように見える祖父・豊(佐戸井けん太)は孫の心配など意に介さず、「誰かいい人はいないのか」「このホテルを継ぐのは律なんだぞ」と、相変わらずの調子で結婚話を持ち出す。しかし、律は今は誰とも結婚する気がないことをはっきりと伝える。 第5話で描かれた涼と律のシャーペンの交換。この何気ない場面からも、2人の関係性が持つ繊細なバランスが浮かび上がってくる。ドラマを通じて幾度となく描かれるのは、涼の無邪気なまでの友情への信頼が、図らずも律の心を締め付けているという事実だ。 涼は「友情の証のユニフォーム交換」と、何の疑いもなくそう表現する。しかし、それはまるでシーブリーズのキャップ交換のように、“友情でも恋愛でも”あり得てしまう特別さのようにも思う。それほどに、友情と恋愛の境界線はときに曖昧で、捉えどころがないのだから。