『若草物語』“想い”が込められた畑芽衣の圧巻の長台詞 涼と律の“進まない”関係も
北海道の大学を選んだ理由を衿(長濱ねる) に打ち明けていた律(一ノ瀬颯)
そんな心模様を象徴するかのように、律は後に北海道の大学を選んだ理由を衿(長濱ねる) に打ち明けていた。涼にとっては永遠の友情であるはずのものが、律の胸の内では、既に友情という器には収まりきらない想いへと育っていた。 「男女の友情なんて、欺瞞に満ちてるのよ。ちょっと茶々が入ったくらいで崩れちゃう」 律の涼への想いを見抜いているかなえ(筒井真理子)は、2人の関係を見ているのがもどかしくてならないのだろう。恋を避けようとする涼と、想いを胸の奥に秘めた律。恋愛脚本家のかなえとしては、そんな2人の背中を押したくなる……が、2人の恋はなかなか前に進まない。しかし、この“進まない”状態こそが、本作には大切なのかもしれないとすら思わされる。一途に涼を思う律の想いが報われてほしいという気持ちはあるものの、このドラマの魅力は、恋愛至上主義の世の中に違和感を持つ涼の視点にこそあるからだ。 もし涼の恋が簡単に進展してしまったら、このドラマは大切なものを失ってしまうだろう。それは、「恋愛が全て」という世の中の風潮に、静かな疑問を投げかける力だ。涼の「恋愛をしない」という在り方と、ラブコメとしての王道的な結末。本作は、最後にどちらの道を選ぶのだろうか。その答えはまだ見えない。 「今のままでいたいのに、今のままじゃいられない」。涼と律の心に同じように宿っている、この気持ちの向かう先は正反対だ。涼は恋愛から目を背け、律は新しい関係へ踏み出せないでいる。でも、このままでいいのかと揺れる心だけは、2人に共通する本当の気持ちなのかもしれない。
すなくじら