「職務停止再び」混乱に拍車かかる韓国…韓悳洙首相の弾劾案可決、野党の強引な対応に批判
【ソウル=仲川高志】韓国は、戒厳令を宣布した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に続き、大統領職務を代行する韓悳洙(ハンドクス)首相まで弾劾(だんがい)訴追案が可決されて職務停止となり混乱に拍車がかかっている。国政の課題が山積する中、議会で多数派を構成する野党の強引な対応に批判も出ている。
「大統領代行としての役割を忠実に遂行しなければならない」
左派系最大野党「共に民主党」の趙承来(チョスンレ)首席報道官は、韓氏に対する弾劾訴追案の可決後に発表した談話で、韓氏に代わり、大統領代行を務めることになる崔相穆(チェサンモク)副首相兼企画財政相に注文を付けた。韓氏が見送った空席となっている憲法裁判所の裁判官3人の任命などに触れた。
「共に民主党」が韓氏を職務停止に追い込んだのは、韓氏が、尹氏の弾劾審判に向けて阻害要因となると判断したためだ。次期大統領選レースで独走状態にある同党の李在明(イジェミョン)代表は、来年前半にも大法院(最高裁)で出るとされる公職選挙法違反事件の判決で有罪が確定すれば大統領選に出られなくなる。
「共に民主党」は、14日の尹氏に対する弾劾訴追案の可決直後、政府・与党に対し、国政安定化に前向きな姿勢を示していた。具体的には、政府、国会、与野党が参画し、政策を決定する「国政安定協議体」の設置や、韓氏に対する弾劾訴追案の提出の見送りなどだ。
ただ、韓氏が19日、野党主導で国会で可決した農産物の価格保障法案など6法案に拒否権を行使したり、憲法裁裁判官の任命を保留したりすると態度を一変させた。26日に予定された国政安定協議体の初会合は、与野党対立で開かれなかった。「共に民主党」は、自党の主張を崔氏が「丸のみ」しなければ、崔氏に対しても弾劾訴追に動く可能性が高い。
国家の司令塔が相次ぎ職務停止となったことで、行政、経済、外交などの停滞は必至だ。
27日には、ソウル外国為替市場で、1ドルが1485ウォンを記録し、2009年3月以来のウォン安・ドル高水準となった。韓国紙「毎日経済」(電子版)は原材料の輸入価格が急騰するなどして「企業は非常事態だ」と報じた。