県、自費解体を推進 「公費」想定数1.4倍で 作業迅速化へ方針
●業者に自ら依頼、工事後に払い戻し 石川県は25日までに、能登半島地震で半壊以上となった建物の解体撤去を加速するため、所有者が自ら業者に依頼し、工事終了後に市町から費用の払い戻しを受ける「自費解体」を推進する方針を固めた。解体想定数が当初の1・4倍となる3万2410棟に膨らんだことから、公費解体のみでは時間がかかるとみて、自費解体の活用も促すことで来年10月までの作業完了を目指す。 自費解体は、公費解体と同じく半壊以上の建物が対象で、費用は国や市町への補助金で全額が賄われる。建物の所有者自らが業者に依頼するため、公費解体に比べて早期に解体作業を行える利点がある。 一方、被災者自身がいったん業者側に費用を支払わなければならないことに加え、公費解体で作業を行った場合よりコストがかさんだ場合は、全額が払い戻されない可能性がある。 県によると、自費解体は公費解体の一種だが、能登半島地震の被災者の利用は全体の1・5%と低い。自力で業者を見つける手間に加え、自費解体そのものを知らない被災者が多いことなども影響しているとみられる。 こうした状況を受け、県は環境省の協力を得て、自費解体の推進にかじを切る。具体的には、被災者が業者を探しやすいようホームページで一覧を公開するほか、制度の特徴を正しく理解してもらうため、各市町に事前に相談するよう求めるチラシも作成する。 環境省は新たに、被災者や市町、事業者向けに制度の概要を記した手引きをまとめた。 ●当初比9911棟増加 県によると、半壊以上の建物の解体想定数は今年2月時点で2万2499棟だったが、足元の申請ペースなどを考慮して見直した結果、9911棟増えた。内訳は輪島市の9685棟が最多で、珠洲市の7195棟、志賀町の4012棟と続いた。申請数の伸びが鈍化している穴水町は想定数が当初より減った。 県は今後、自費解体の推進を含めた新たな解体プランをまとめ、進捗状況を定期的に公表する。今年12月末までの解体目標を1万2445棟に設定し、11月には、解体作業班を現在の倍となる最大1120班に増やす。富山、福井、新潟に加え、27都道府県からも業者を受け入れ、民宿や借家など3400人分の宿泊先を確保する。 ●災害ごみ鉄道輸送 発生する災害ごみの推定量は当初より88万トン多い332万トンとする。仮置き場は6カ所増の22カ所とし、東京や大阪など県外の公共処理施設や県外の民間施設での処分も進める。海上、道路に加え、新たに鉄道輸送も計画する。