予想外に“復活”した列車2選
【汐留鉄道倶楽部】2023年春のダイヤ改正をきっかけに“復活”した列車がある。ダイヤ改正といえば、新幹線の延伸や大都市の新線開業などの明るい話題と、ローカル線の廃止やベテラン車両の引退のような残念なニュースが定番であり、復活劇は珍しい。 鉄道ファンを歓喜させたのは、国鉄185系による特急列車だ。185系は国鉄が最後に製造した特急形電車で、主に東海道、東北、高崎、上越線の特急列車で活躍した。最後まで残った定期特急は、東京と静岡の観光地、伊豆を結ぶ「踊り子」だったが、2021年3月のダイヤ改正をもって撤退した。 これによって185系の定期運用は終わり、その後は主に団体列車、たまに臨時の快速列車として、不定期に運行されてきた。「もしかして多客期に臨時の『踊り子』として走る日が来るのではないか」というファンの願望は実現することはなかったし、別の特急として運行されることもなかった。 それから約2年が経過した。2023年3月25日、大宮から宇都宮までノンストップの特急「とちぎ1号」が東北線を走った。特別なヘッドマークを付けた観光キャンペーンの臨時列車とはいえ、正真正銘の185系の特急だ。指定券の売れ行きは上々だったらしいし、あいにくの雨にもかかわらず、東北線の駅や沿線には多くの撮り鉄が詰めかけたという。
うれしいことに「とちぎ1号」は185系特急復活の序章にすぎなかった。栃木県足利市の「あしかがフラワーパーク」の藤の花が見頃となる4月下旬から5月上旬にかけて、東海道線の大船と両毛線の桐生を往復する特急「あしかが大藤まつり号」が185系で運行されたのだ。それまで快速や別形式での特急だった列車に、うれしい番狂わせが起きた。 筆者は「これぞ真打ち登場」と思い、栃木県内の両毛線沿線に繰り出した。大人気の撮影地は混雑すると予想し、ちょっと地味な場所を訪れた。案の定、後から到着した人が「あっちは激混みで入れなかった」と話し、あきらめてこっちに来たと打ち明けた。こちらは通過直前になっても人がまばらでのんびりできた。晴れたり曇ったりの過ごしやすい天気。畑と山々の緑に囲まれて、電車の待ち時間すら気持ちよかった。 やがて「ガタン、ゴトン」というジョイント音がリズミカルに近づき、力強いモーター音をうならせて「あしかが大藤まつり号」が通過した。絵入りのヘッドマークではないものの、愛称幕には「臨時特急」の文字が堂々と浮かんでいた。待ちに待った特急らしい姿に身震いした。