予想外に“復活”した列車2選
後日、上越特急「谷川岳もぐら」と「谷川岳ループ」、伊豆特急「185(いっぱーご)」も「臨時特急」幕で走った。それぞれ、かつての185系特急「谷川」や「踊り子」を思わせるコースを走っているため、本当の「真打ち」はこれらの列車だったといえる。 次に挙げるのは、2015年に営業運転を終えた区間の一部で復活を遂げた東武8000型だ。8000型は1963年から1983年まで712両が製造され、数の多さから「私鉄の103系」と呼ばれている。まさに東武の通勤電車の“顔”だったが、次々と後進に道を譲り、東上線では主要区間の池袋-小川町からは撤退して、小川町-寄居だけで走っていた。 ところが2023年春のダイヤ改正により、池袋方面-小川町を走る10両編成の列車のうち、昼間の多くが途中駅の森林公園までへと運転区間を縮めた。代わりに森林公園-小川町では、4両編成の8000型がワンマンで走るようになった。予想外のできごとだった。
乗客にとっては「悲しい合理化」かもしれないが、路線を維持するための苦肉の策なのだろう。副産物として、昼間の8000型はほとんどが森林公園-小川町-寄居を走り抜けるため、利用区間によっては乗り換えの手間が省けて便利になった。また、この区間は10両編成だとスカスカで寂しかったが、4両編成ならまんべんなく乗客がいて活気を感じられる。そう思えばプラスの面だって見えてくる。 乗り鉄にとっては、森林公園-小川町は小川町以北にない高速走行を楽しめる。撮り鉄の視点では、緑に囲まれた直線区間があり、季節感のある写真を狙えるし、すっきりとした編成写真も撮影できる。8000型は一般色のほか、過去の車体色を復活させたリバイバルカラーがあり、被写体として魅力的だ。185系ほどの派手さはない、というか比較にならないほど地味だが、鉄ちゃんが殺到しない“日常鉄”を満喫できてありがたい。 ☆共同通信・寺尾敦史