アトツギ甲子園、2025年度も開催へ 補助金だけでない中小企業の事業開発支援
補助金だけでない中小企業の事業開発支援
アトツギ甲子園に優勝賞金はありません。優勝したらVCと必ずつながれるわけでもありません。それでも、2024年度の第5回は全国から189社のエントリーがありました。大会後にエントリーした後継者同士のネットワークやコラボレーションが生まれるのがアトツギ甲子園の特徴の一つです。 今回、取材をするなかで、事業化につながった事例がいくつもありました。コロナ禍以降、事業再構築補助金など事業開発を後押しする数千億円規模の補助金が立ち上がったものの、日本各地で似たような自販機や無人販売店の事業が急増するなど、その後の効果検証で疑問視する声が上がっています。 一方で、アトツギ甲子園を含む後継者支援ネットワーク事業の予算は1年度で数億円。エントリーする中小企業の後継者は多い年でも300社程度にとどまり、政府内には、アトツギ甲子園を続けて意味はあるのかという厳しい意見もあります。 また、直近の大会運営では、エントリー者を増やすため、支援機関の巻き込みや事業開発支援にも力を入れており、一番の目的である「地域の後継者の掘り起こしや、掘り起こされた後継者同士と先輩経営者によるネットワークの構築」から外れ、本当に“アトツギ”のための事業なのかという声も聞こえてきます。 それでも、この5年間続けてきたことで“事業の芽”が確実に育ちつつあります。政府は、EBPM(証拠に基づく政策立案)を重視していますが、流行では終わらない事業の継続性まで含めた費用対効果で考える必要があります。中小企業政策というと、補助金が注目されがちですが、補助金だけでは実現できない支援がここにあります。
杉本崇