「女性3人+5匹」全国初の猫つきシェアハウス 「このまま一緒に住み続けたい」
近年、急速に広まりつつあるシェアハウス。そこに、さらに新しいスタイルが誕生した。同居人が5頭の猫だという「猫つきシェアハウス」だ。その狙いは、捨てられて殺処分される猫を少しでも減らすことにある。(内村コースケ/フォトジャーナリスト) 【写真特集】「猫つきマンション」って何?
もともと猫がいる空間に人間が入る
全国初の「猫つきシェアハウス」は、東京・杉並区内のマンションの一角にある。フロアの一部をリフォームし、4.5畳の居室3部屋とリビングダイニング、風呂・トイレなどの共有スペースを作った。計40平方メートルのこじんまりとしたシェアハウスだ。 女性専用で定員3名……いや「3人+5匹」と言った方が正しい。人間の方は9月25日から入居を始めたが、猫たちは場に慣らすため、その一か月前から入居している。最近は自分の飼い猫を連れてくることを許可しているシェアハウスもあるというが、こちらは「もともと猫がいる空間に人間が入る」という形だ。 また、この「猫つきシェアハウス」が一般の「猫可」の物件と根本的に違うのは、捨て猫や野良猫の保護に主眼を置いていることだ。ここにいるのは、いずれも猫専門の保護団体『NPO法人・東京キャットガーディアン』が保護した猫たち。数多くの猫を飼いきれなくなった一般家庭やブリーダーで飼育放棄された、いわゆる「多頭飼育崩壊」の現場から救い出された。もともと一緒に暮らしていた5頭なので、現在の共同生活にもスムーズに移行できたというわけだ。
「猫つきマンション」の次のステップ
『東京キャットガーディアン』の活動を切り盛りする山本葉子代表のもとには、毎日何十件と保護の依頼、通報、相談の連絡が来る。昨年は768頭を保護し、697頭を里親に譲渡した。「シェルター」と呼ばれる保護施設を都内に2か所持っているが、常に満員状態だ。 年間約13万頭と言われる殺処分(保健所・動物愛護センターに持ち込まれ、里親が見つからずに殺されること)数に対して、山本代表らが身を粉にして尽くしても、数字の上では「焼け石に水」というのが現状だ。必要とされているのは、人手、資金、そして保護する「場所」だ。 「猫つきシェアハウス」を管理・運営する不動産会社『リビングゴールド』の藤堂薫さんは言う。「このようなシェアハウスができていくということは、5頭なら5頭ずつの小さなシェルターが開設されるのと同じことになります」。住人に積極的に猫の世話に参加してもらうことで「人手」の問題も解消していこうという狙いもある。 『東京キャットガーディアン』の山本代表は、2010年から大家さんや不動産会社に呼びかけ、保護猫と一緒に暮らすことのできる「猫つきマンション」を始めた。大きな反響を呼び、全国に広まりつつあるが、こちらは主に1対1の関係。一度に預かることのできる頭数を増やすとともに多頭飼育崩壊にも対応できるよう、次のステップとして考え出されたのが「猫つきシェアハウス」というわけだ。もともと猫好きな藤堂さんが主旨に賛同し、実現した。