大島紬振興で南さんら3人表彰 伝統的工芸品産業功労者
2024年度の伝統的工芸品産業功労者等表彰の受賞者がこのほど決定し、11月に石川県と福岡県で表彰式があった。国指定の鹿児島県の伝統的工芸品「本場大島紬」の分野では、南愛子さん(75)=鹿児島県龍郷町=が経済産業大臣表彰の功労賞を、榮夏代さん(81)=同県奄美市笠利町=と、暁正文さん(75)=鹿児島市=が九州経済産業局長表彰の功労賞を受賞した。 表彰は伝統的工芸品産業の振興に関し顕著な功労があった個人・団体が対象で、1984年に創設された。 南さんは福島県出身。夫の祐和さんと結婚し、72年に奄美に移って以降、本場奄美大島紬の制作や販売に50年以上携わる。99年に伝統工芸士(意匠部門)に認定。全工程を習得し、専門は絣(かすり)糸の束を、織り機にかける前に1本(スジ)ずつに分ける「揚げ枠」。表彰を受け「昔から織りの着物が好きだった。最初は大変な業界に来たと思った。(大島紬の制作は)毎日、何十年やっても奥が深い。多くの人に着てもらいたいと思って作っている。本気で織り続けたいと思う若者が増えてほしい」と語った。
榮さんは龍郷町赤尾木出身。姉たちから織りを習い、17歳から大島紬の織り技術者として60年以上にわたり従事。着付け教室など普及活動にも努めるほか、「本場奄美大島紬技術専門学院」で指導員として後継者育成にも携わる。90年に伝統工芸士(製織部門)に認定。織りの魅力を「技術を習得すれば健康な限り、いつまでも続けられること。習得するまでは忍耐。大島紬は奄美の歴史で、1人でも多くの人が大島紬を織れるようになってほしい」と語った。
暁さんは鹿児島市出身。両親が笠利町出身で、自身も市内の高校を68年に卒業後、笠利町や名瀬の親族の元で大島紬の制作を学んだ。鹿児島市に戻り本場大島紬の制作に従事。2000年に伝統工芸士に認定(染色部門)。専門の工程は締め機を使って、模様を作るために防染用の綿糸で絹糸を織り締める「絣締め」。受賞を「大島紬の制作は自分1人ではできず、いろいろな人に支えられ感謝。大島紬は(織りの工程が2度ある)緻密(ちみつ)な織物で、泥染めの特徴もあり、世界の人たちに知ってもらいたい」と期待した。