三菱商事1939万円、トヨタ895万円「年収2倍超の大格差」を生む日本経済の根深い病理とは?
賃上げは定着するのでしょうか。注目したいのが三菱商事とトヨタの平均年収です。三菱商事1939万円、トヨタ895万円と、2倍超の格差があります。「業種が違うからでしょ」と思われる方、原因はそれだけではありません。実は、この格差には日本経済を蝕む「根深い病理」が隠れているのです。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博) 【画像】年収が高い会社ランキング2023、三菱商事は3位!驚きの2位と1位は? ● 三菱商事1939万円、トヨタ895万円 平均年収で2倍以上の大格差 6月4日の経済財政諮問会議で提示された「骨太の方針」案で、政府は賃上げを定着させるため、労働市場改革などに重点的に取り組むことを示しました。 インフレや円安が社会課題になる中で、政府の要請を受けて上場企業を中心に賃上げが相次いでいます。一方で中小企業を含めた日本経済全体ではインフレを賃金上昇が下回る「実質賃金の減少」状況が続いています。 賃金上昇は定着するのでしょうか?そして実質賃金は上昇するのでしょうか? ここでまずご覧いただきたい興味深い2つの数字があります。ひとつは三菱商事の平均従業員年収が1939万円という数字。もうひとつはトヨタの平均年収が895万円だという数字です。 両社とも政府が要望する5%を超える賃上げ回答をしており、ここ数年、過去最高水準の利益をたたき出している日本を代表する優良企業です。それなのに、なぜ平均給与が倍以上も開いているのでしょうか?
● 三菱商事にとって 「社員=無形資産」 今回の記事ではこの謎から、日本経済の賃上げの未来について論じていきたいと思いますが、先にネタばらしをしておきます。 三菱商事にとっては社員は無形資産であり、お金を稼ぐ武器です。一方でトヨタにとっては労働者は製造原価であり、削減したほうが利益があがるものです。 このふたつの真逆の方向性の考え方は、実は日本経済全体を蝕む社会問題でもあります。順を追ってお話ししていきたいと思います。 今、世界経済全体で成長するふたつの事業セグメントでは人的資本経営が重要視されています。 ひとつはマイクロソフトやエヌビディアに代表されるマグニフィセントセブンのようなITハイテク領域、もうひとつはゴールドマンサックスやビザ、バークシャーハサウェイなどに代表される金融投資領域です。 これらの領域で事業を成長させる最大の経営資産は人材です。ところがこの領域で今、おかしなことが起きています。