空き家となった実家の売却益で「300万円の大差」!AさんとBさんの明暗を分けた原因は?
本連載の第1回では「相続した実家の土地は本当に無能なのか?」と問題提起したところ、大きな反響があった。昨今は相続放棄を選ぶ人も急増しているというが、もし手放すのなら、できるだけ高値で売却にこぎつけたいもの。そのためには、どんなことが大切になるのか。空き家を売却する際の“一芸”を紹介しよう。(一芸物件専門家/キャリアコンサルタント 井上敬仁) 【この記事の画像を見る】 ● 固定資産税の圧迫に耐えかねて 実家を売却!手取り額の「分かれ目」とは? それぞれ郊外の実家を相続し、数年間は空き家として保有してきた2人の人物がいます。AさんとBさんとしましょう。いずれも郊外の立地で、土地は路線価が共に10万円/平米、敷地面積は150平米と、かなり似た条件の物件です。 家族の思い出が詰まった実家ですが、住む人がいないのに固定資産税を支払い続けていること、建物が経年劣化していくことなどを憂慮し、2人ともついに手放す決意をしました。 …と、ここまではほぼ同じストーリーですが、結果は両者で大きく異なりました。売却後の手取り額は、Aさんが1000万円、Bさんは1300万円と300万円もの差が出たのです。 この差は一体、何が原因でしょうか?
不動産を売却するとき、多くの人は最初に不動産屋さんに相談に行くでしょう。Aさんもまずは実家の近くで信頼できそうな不動産屋を見つけ、訪ねてみました。そして、実家の売却について話してみたところ、こんなアドバイスをもらったのです。 「住宅として売るなら、最低限、建物の水廻りのリフォームをしておくことが必要ですね。ただ、ご実家はだいぶ古いので、更地にしたほうが売却しやすいかもしれません」 ということで、Aさんはこの不動産屋に家屋の解体工事の手配と土地売却の仲介を併せて依頼することにしました。 土地の売買において、価格の評価基準としてよく使われるのが、国税庁が公表する路線価です。Aさんの相続した土地もこの路線価を参考に、10万円×150平米で1500万円と評価され、この価格で売却されました。 不動産屋からは、「建物の解体費用は500万円」との提示があり、Aさんの手元には売り値の1500万円から500万円を差し引いた1000万円が入ってきました。 ● 建物の解体は業者任せだと 知らぬ間に大きな費用を払っていることも 一方、Bさんもまた、実家の古い家屋は取り壊し更地として売却しようと考えました。そして、調べてみたところ、「更地にするには建物の解体工事が必要だが、良心的な工務店なら比較的安価でできるらしい」と知ったのです。 そこで、手間はかかりましたが、Bさんは地元で実績のある工務店3社を選び、見積もりを出してもらい、そのうちの1社に200万円で解体を依頼しました。 その後はAさん同様、地元の不動産屋に仲介してもらい、路線価を参考に算出された1500万円で土地を売却。持ち出した解体費用の200万円を差し引いた1300万円がBさんの手元に残りました。 なお、土地を売却すると、不動産業者への仲介手数料、役所での不動産登記費用、譲渡所得税などがかかります。Aさん、Bさん共に合計100万円以上になると想定され、売り値からこれを差し引いた額がそれぞれの売却益となります。