一見ダンゴムシ どんな味?深海生物「超グソクムシ煎餅」愛知水族館で人気
愛知県蒲郡市の竹島水族館で、深海生物のオオグソクムシを香り付けに使ったせんべい「超グソクムシ煎餅」が、好調な売れ行きを見せている。深海生物使用という意外性と、ダンゴムシに似たオオグソクムシの姿を印刷した立体パッケージが人気で、土産物としてまとめ買いする来館者もいる。同館は「グロテスクというイメージもあるが、深海生物に興味をもってもらうきっかけになれば」と期待する。
きもかわいいオオグソクムシ “大漁”がきっかけ
商品開発は2015年11月にスタート。同館の小林龍二館長が、地元の若手経営者らが集まる勉強会に講師として招かれたことがきっかけ。「地域を盛り上げたい」という菓子製造やパッケージ制作、デザイン企画の各業者が知恵を出し合った。当時、オオグソクムシなど深海生物が「きもかわいい」などという理由で注目を集めており、同館でも展示や直接触ることができて好評だったことから、活用を決めた。 オオグソクムシは体長10センチほどで日本近海に生息。シャコやエビに近い食感だが泥臭さが際立ち、食用には向かない。網にかかると地元の漁師は捨てていたが、同館では一部を購入し、展示していた。時に“大漁”になることもあり、取り扱いに苦慮することもあったことから、処分ではなく消費するという考えで、せんべいに使うことにした。専門の加工工場で内臓を取って焼き上げて粉砕。カツオのエキスやエビパウダーにまぶした。
「おいしい」それとも「まずい」? 味つけの苦悩 パッケージでインパクト
企画途中、味について「おいしくする」か「まずくする」か、意見が割れることもあったという。まずい生き物をそのままの味で商品化すれば、インパクトがあり注目を集めるという考えがあった一方、商品が継続して売れなくては意味がないという意見も出た。最終的に、カツオだしが効いたえびせんべいで、注意深く味わうと、少しだけ泥臭さのような風味を感じられるような商品に仕上げた。味での表現を抑えたインパクトは、パッケージで表すことにした。 直径3センチほどの円形のせんべい50グラム入りの袋が2つ入って1箱1000円(税込)と設定し、今年4月下旬に発売開始。コスト削減のため、2袋をパッケージに詰める作業は、同館職員で実施する。当初は大型連休10日間に、1回の注文で納品される240箱を売るという考えだったが、実際は3日間で完売し、連休中に品切れとなってしまった。売れた理由は特徴的なパッケージで、中には「ネタになるので友人に配る」と、1人で5箱ほどまとめ買いをする人も多かったという。
売り切れたら入荷待ち SNSで広がる
現状は、捕れる量に差があったり、深海魚の禁漁時期があったりするなどの理由から、商品は入荷できる量を入れて、売り切れたら入荷待ちになるという状態が続いている。一方、土産で手にしたという人がSNSに投稿するなど、反応は広がるばかりだ。友人からもらったという名古屋市の主婦(33)は「パッケージに驚いたが、食べてみるとおいしくて、また食べたいと思った」と話した。 小林館長は「地域で企画した限定商品が人気になってよかった。来館するきっかけになって、多くの人が訪れて、地域全体が活性化すればうれしい」と語った。 (斉藤理/MOTIVA)